何事も超ポジティブに
中日ドラゴンズ 加藤竜馬投手
プロ野球が開幕した。今回の「ザ・作州人」はセ・リーグの首位を走る中日ドラゴンズに入団した加藤竜馬投手（24）を紹介する。2月のキャンプで1軍に抜てきされたものの、右前腕の張りのため、現在は2軍で調整中。しかし、順調に回復しており「シーズン半ばには戦力としてチームに加わりたい」と意気込んでいる。
また1人、津山出身者がプロ野球の世界に飛び込んだ。分厚い胸板に、いかつい二の腕。仕事柄、いろんなアスリートを見てきたが、これだけで只者ではないとわかる。加藤さんは「両親に感謝しないといけません」と言って、はにかんだ。
185センチ、100キロのサイズにして50メートル走5秒9の俊足。実際、高校3年秋にアメリカンフットボールの名門・立命大のセレクションを受け、特待生として勧誘されたほどの身体能力を持つ。しかし、プロ野球選手になる夢は諦められなかった。
津山市加茂町出身。大きな分岐点は母の心配をよそに故郷を離れ、大阪偕星学園に進んだことだ。「単に加茂を離れたかっただけなんですが」。捕手を務め、キャプテンをまかされた。しかし、甲子園の夢は遠かった。そこから東都大学リーグの名門、亜細亜大へ。同学年、前後の学年にオリックスの頓宮裕真らのちにプロで活躍する選手がゴロゴロおり、大いに刺激を受けた。
何より、大阪偕星、亜大と言えば鬼の練習で知られたところ。心身ともに鍛え上げられたのは想像にかたくない。さらに亜大では地肩の強さを買われて、本格的に投手へ転向。これも運命の分かれ道になった。
また東邦ガスでの2年間は野球だけでなく、営業マンとしてセールスでも鍛えられた。「この体ですから怪しい人と思われたり、怖がられたりもしました。契約は50軒訪ねて１軒ぐらい。苦労もしましたが、いい経験をさせてもらいました」
最速154キロのパワー系。キャンプでは1軍に抜てきされたが、中盤に右前腕に張りを覚え、2軍でスロー調整することに。その後、情報が途絶えていたので、心配している人も多かったかもしれないが、現在は痛みもなくなり、シート打撃に登板できるところまで進んでいる。何より、その明るい声に安心した。
「いまはもう10割です。大きな故障になる前に早めに休んで良かったと思います。もともと超ポジティブですし、プロの環境にも慣れ、前向きに取り組んでいます。先輩方もみんな親切。あとはゲーム中で実績を積んで、シーズン半ばには上に上がりたいと思っています」
名前は竜馬と書いて「りゅうま」と呼ぶ。中日に入団したのも何かの縁か。「生まれはうさぎ年ですが、辰年にドラゴンズに入団した。大きな出来事のときに運がいいし、巡り合わせはいい方。いろんな方と出会いがありました」
それにしても高校で大阪に出るのは大きな冒険ではなかったか。津山にいる中高生にメッセージを求めると「津山の中だけでは経験できないことがある。いろんなところに出て経験するのが一番」と話してくれた。
シーズンは始まったばかり。投手としての伸びしろは相当ある。目標は160キロ。堂々とした体格の加藤さんが1軍マウンドに立つ日はそう遠くない。（山本智行）
◇加藤竜馬（かとう・りゅうま）1999年5月13日、津山市加茂町生まれの24歳。美作スーパースターズヤングで野球を始め、高校は大阪偕星学園へ。亜細亜大、東邦ガスを経て2023年ドラフトで中日に投手として6位入団。背番号96。185センチ、100キロ。右投両打。家族は父・光祐さん（53）、母・典枝さん（50）に姉がいる。
