岡山県美咲町の二上山・両山寺で14日夜、神が憑(つ)いた“ゴーサマ”が暗闇の境内を駆け回る「護法祭」(国選択無形民俗文化財)が開催され、大勢の参拝者が“天下の奇祭”を見守り、天下泰平、五穀豊穣を祈願した。
起源は鎌倉時代の1275年。護法善神という神が鎮守する土地を見回るため人に乗り移り、身心不浄者は捕まって災いがあるとされる。山伏の行事として引き継がれ、今年が748回目。
ゴーサマの呼び名で知られる護法実(ごほうざね)は9年連続で同県津山市出身の白川晃太郎さん(50)=大阪府大阪市=が務め、1週間寺にこもり、身を清めてきた。
本堂で修験者の祈祷(きとう)が続き、ほら貝と太鼓の音が激しく鳴り響くなか深夜0時半ごろ、護法善神の使いであるカラスの憑いたゴーサマが飛び出し、“お遊び”の始まり。地面のたいまつだけが境内を照らすなか、鳥のように手をはばたかせながら、お付きの人の「ギャーテー、ギャーテー」の呪文とともに縦横無尽に駆け回った。
儀式は40分ほど続いた。同僚と2人で来ていた同市の保育士・蔦谷健多さん(37)は「恐怖はなかったが、とても神秘的で、感激しました」と話していた。