作州人九十三 シンガーソングライター 土居正明さん
音楽活動へギアチェンジ
今年最後の 「ザ・作州人」 は大阪在住のシンガー、土居正明さん(43)に登場していただいた。4オクターブを自在に操り「DI―RAY (ディー・レイ)」の名で歌手活動をしながら音楽フェス「音色」を運営して12年になる。今年8月には「津山納涼ごんごまつり」 で凱旋 (がいせん) ライブを行うなど“遅咲き”のシンガーは今後も音楽と真っすぐに向き合って行く。
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自然体という言葉がぴったり当てはまる。 無理に流れにあらがうことなく、 かといって楽な方に流されたりもしない。土居さんは 「DI―RAY」 の名でシンガーとして活躍する一方で、 いまやビッグフェスとなった 「音色」 を運営したり、 音楽事務所 「インフィニティループ」 を立ち上げるなど、 関西の音楽シーンで存在感を発揮している。
「自分にとって音楽は人生の一部です。 歌をうまくなりたいし、 死ぬまで音楽活動を続けたいと思っています」
シンガーとしては遅咲きだ。 中道中から津山工の建築科を出て、大工大へ。 このころ、大阪・ミナミのクラブに足繁く通っているうち、ミュージシャンの三木道三が所属する事務所とつながることができた。
「小さいころはいたずら好きの変わった子。 津山では歌っていなか
ったんですが、大阪でたくさんの出会いや縁がありました。あの当時の大阪のクラブシーンでは男性シンガーが少なく、そこそこ歌が歌えればチヤホヤされたんですよ」
20歳でR&Bやヒップホップのシンガーとして本格デビュー。「DI―RAY」 の 「RAY」は「光線」とか「光輝く」を意味し、その願いも込めたが、自分の実力にがく然とした時期もある。
「洋楽アーティストとの差を痛感しましたし、自分の歌の個性が見い出せず、もがきながらボイトレに通ったものです」
地道に活動しながら仲間にも恵まれ、30歳では音楽フェス「音色」を立ち上げた。10周年では青山テルマら大物歌手をキャスト。その後も旬なアーティストをブッキングすることでいまや関西を代表する音楽イベントへ成長させた。
「裏方の仕事はライブでステージに立つより大変ですが、みんなの喜ぶ顔が原動力になっています」
現在はクラブで知り合って結婚した妻と高校生と中学生になる息子2人と大阪市内で暮らす。35歳からはゴスペルにも参加し、2年前には音楽事務所「インフィニティループ」を立ち上げた。一見、ここまで順風満帆に思えるが、そうでもなかったようだ。
シンガーとしての顔の他に個人事業主として塗装業「DI」を営んでおり、 音楽活動と父親としての役割をバランス良く保ってきた。
「もちろん、生計を立て、家族を養っていくためではあるんですが、内装の仕事をすることで自分の器量やコミュニケーション能力を試されているようで、いい学びになっています」
今年8月には「津山納涼ごんごまつり」で初の凱旋ライブ。4オクターブを自在に操る歌声で地元の観客を沸かせ、「いまやっとこのステージに立てた。津山最高です」と熱い思いを伝えた。
次回の「音色」はすでに来年5月24日に決定している。今後はライブも精力的に行い、東京での活動も増やす方針だ。
「音楽は奥が深い。曲作りに際して抽象的な表現がいいのか、感情ベースの主観で歌う曲がいいのか、 悩みは尽きません。しかし、音楽は売れる、売れないに関係なく、続ける価値があると思っています。これからは仕事のウエートを変え、音楽活動に費やして行くつもりです」
やる気満々。とはいえ、肩肘を張った感じがしないのがいかにも土居さんらしい。
(山本 智行)
◆土居正明 (どい・まさあき) 1982年2月8日生まれ。中道中から津山工を経て大工大へ。 20歳のとき「DI―RAY」の名で歌手デビュー。その後、 音楽フェス「音色」や音楽事務所「インフィニティループ」を運営する。代表曲は 「Dilemma」。大阪市在住。
