今回の「ザ・作州人」は、このコーナー最年少、2000年代生まれの大学生に登場してもらった。現在、立命館大学の応援団団長を務める小坂田晃嗣さん(22)がその人。見ての通り、泥くささはみじんもなく、爽やかで礼節もわきまえている好青年だ。そうそう、高校での寮生活では俳優の眞栄田郷敦と接点があったと言う。
取材はしてみるもんだとつくづく思う。今回、小坂田さんの情報を提供してくれたのはRSK山陽放送の野球好きディレクター。「大学野球の秋シーズンが始まります。立命館の応援団長、津山出身(岡山県津山市)らしいですよ」
善意は素直に受け取るタイプ。しかも大学の後輩とあらば、少し点数もアップする。連絡を取り合い、どんな人が現れるのか楽しみにしていたら、その落差に驚くことになる。
さすがに昔の漫画「嗚呼!!花の応援団」の青田赤道みたいな男ではないだろうとは思っていたが、ハイ、ご覧の通り。一瞬、俳優かと思わせるような整った顔立ちのイケてる大学生がそこにいた。
「立命館大学応援団団長の小坂田晃嗣です。ここ数日は箱根駅伝予選会、立同戦前夜祭などがあり、なかなかお時間が取れずに申し訳ございませんでした。よろしくお願いいたします」
話し方、声の質もさわやか。昭和の応援団をイメージしていた自分を恥じるしかなかったが、取材を進めていくと、泥くさくない理由が分かった。
北陵中では吹奏楽部に入り、トロンボーンに魅了された。高校は津山を離れ、岡山市内にある明誠学院高等学校へ。これは8歳上の兄・晏敬さんが中学時代の恩師、稲生健先生の転勤とともに明誠へ進んでおり、その影響を受けたからだそう。
「兄を見ていて、いいなと思いました」
実際、明誠は吹奏楽が有名で、小坂田さんも3年間で主要な全国大会に5度出場した。さらに寮生活では現在、俳優として大活躍している眞栄田郷敦がサックス担当で2学年上だったそうだ。
「よくしてもらいましたし、いまでも誕生日に連絡を取り合ってます。ある台風の日に寮生みんな全裸になって、外を走り回った思い出もあります。高校では音楽漬けの毎日でしたが、1人暮らしをしたことで親のありがたみが分かりました」
そこから立命館大へ。下積みを経て4年生の現在、応援団団長になった。ここまではすべて兄と同じコース。ちなみに、津山洋学資料館の館長を務めていた父・裕造さんも“立命ファミリー”だそうだ。
応援団は吹奏楽部、チアリーダー部で構成され、その中から有志で集まった「エンジ隊」と呼ばれるメンバーが応援団として「フレー、フレー」といった声出し、演舞などのパートを担う。出番は入学式、学園祭、球場などなど。様々な場面で会場を盛り上げる。
「勝利を信じて、ひたすら全力で応援し続けるのなんて、そうそう経験できることではありません。利他の精神によって、だれかが笑顔になったり、勇気をもらったと言ってもらえると、やってて良かったと思います」
団員は170人の大所帯。うち女子が7割だそう。「みんなをまとめるのは大変。どういう言葉を掛けたらついてきてくれるかを考えます」と葛藤もある。その上で「OBからは愛のこもった厳しい言葉も言われ、反省することも多いですが、団長は会社で言えば社長の立ち位置。全体を見て判断するなど、いい社会勉強ができていると思います」
余談だと思いつつ最後にトロンボーンの魅力を聞くと「ハーモニーの楽器。中音楽器で人間の声に近く、万能なんですよ」と教えてくれた。
今週の20日からは関西学生野球「立同戦」だ。優勝は関西大に決まりそうだが、率いているのが津山出身の早瀬万豊監督なら、それもまた悪くない。それに順位に関係なく盛り上がれる大一番でもあり、応援団としてもクライマックスの舞台となる。
♪空はさながら青春の〜。久々に足を運んで応援歌「グレーター立命」が歌いたくなった。(山本智行)
◇小坂田晃嗣(おさかだ・こうじ)2001年8月25日、岡山県津山市生まれの22歳。北陵中、明誠学院(岡山市)ともに吹奏楽部に所属し、全国大会5度出場。立命館大学入学と同時に応援団の吹奏楽部へ。現在、団長として男女170人の団員を束ねる。座右の銘は「心を燃やせ」。173センチ。