ハヤブサ

自然 ハヤブサ
ハヤブサ
         

 最速の猛禽で知られ、絶滅危惧種に指定されているハヤブサが、新魚町の商業ビル・アルネ津山の外壁のくぼみに営巣して今年で9年目となった。繁殖に成功していれば、6月上旬までに幼鳥の姿が確認できるかもしれない。近隣の住民にとっては毎年の楽しみになっている。
 「翼のかたちが美しい。県北には山がいくらでもあるけど、ここが彼らのすみかに合っているのだろう」。新魚町の鮮魚店の店主男性(67)が、まだら模様の入った白い腹を向け、はるか上空を旋回する姿に目を細める。
 鳥の中でも猛禽類が好きで、いつも仕事の合間に店の駐車場の前で観察している。
 巣は西側の壁面。4月にこの場所でつがいが交尾したのを確認した。5月下旬以降、「キーキー」という小さな鳴き声が聞こえるようになったという。例年のように3個ほどの卵がかえり、順調に育っているならば、そろそろ褐色がかったあどけない姿の幼鳥が顔をのぞかせ、羽をばたつかせながら巣立ちの練習を始める頃だ。
 「猛禽といっても子どもはかわいい。今年はどうなるかな」。いつも自転車で通る高齢者も、近くで待機するタクシー運転手も気にかけている。
 環境省の猛禽類保護センター(山形県)によると、ハヤブサは通常、海岸や山などの断崖絶壁にある棚状のくぼみに営巣。エサが獲りやすいなど、周辺環境が気に入ると、同じ場所をすみかにし続ける習性がある。
 男性がいうには、かつて近隣のマンションの住民らはベランダのハトのフン害に悩まされていたが、ハヤブサが来てからほぼなくなった。体長40〜50㌢の体で中型の鳥をわしづかみし、アルネ津山に戻るところを最近目にしたばかりだ。
 同センターでは近年、同じような商業ビルやダムなど、人工物を巣にするケースがいくつか報告されている。個体数ははっきり分かっていないが、昭和期以降、公共工事などによって生態系が変化した影響で減少し、同省のレッドリストで絶滅危惧?類に指定。ハトなどが多くいる内陸部の高い建物が種の保存に一役買っている。
 ハヤブサの寿命は最長20年ほど。この先も見られるかもしれない。男性は「貴重な環境。日常の楽しみにもなっているのでこの先もいてもらいたい。地域の皆と見守っていく」と語る。
P①
アルネ津山の西側の壁面に営巣しているハヤブサ

P②
羽を広げて上空を旋回するハヤブサ


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