2023年度に行われた第36回介護福祉士国家試験で、美作高校福祉医療コースは受験した3年生19人全員が合格を果たした。全員合格は同校初の快挙で、教員らは「生徒の介護実習を引き受け、指導してくれた地域の施設の皆さんに感謝したい」としている。
同コースは1996年度に前身コースが発足。介護福祉士の受験資格が取得できる高校は現在、県内に2校あり、県北では同校が唯一。即戦力として活躍できる人材の育成に取り組んでいる。
1年生から専門科目を学び、福祉の現場経験のある教員6人(非常勤を含む)が指導。実習は市内を中心とした介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホームなどで年間30日程度行われる。生徒たちは職員に教わり、必要な知識と技術を身につけた上で国家試験に挑む。
県北でも介護などの人手不足が続く中、福祉の魅力を伝えようと、同コースは中学生を対象にした「実技講習会」を毎年開催している。施設に勤務する卒業生を講師に、ベッドメイキングや車いすの使い方といった基礎技術を体験。昨年参加した中学2年女子は「福祉で地元に貢献できる人になりたい」と進路の参考にしていた。
多くの卒業生が現場で活躍する中、介護タクシー会社を起業したOBもいる。寺坂実成さん(25)はクラウドファンディングで資金を調達し「しえんた」を開業。タクシーは現在6台にまで増えた。仕事のやりがいを「通院の時とは違う、買い物をしている時などのお年寄りの笑顔はやっぱりうれしい」と話す。
自身が卒業した同コースについて「18歳で介護福祉士の資格を持つことは、将来看護師を目指したり、たとえ他職種に就職するにしても付加価値が付き、さまざまな場面で役立つ」。また「介護や福祉の現場にもっと男性が増えてほしい」と期待する。
23年度国家試験は1月にあり、3月末に合格発表が行われた。全国の受験者7万4595人のうち66万1747人が合格し、合格率は82.8%だった。
山下武宏コース長は「今回の全員合格の結果は生徒の努力が一番だが、実習先の施設で学び、育ててもらっていることに深く感謝したい」。就職率も毎年100%を維持しており「これからも人材の供給源として現場で活躍できる生徒を育成し、福祉の魅力を地域の子どもたちにも発信できるよう取り組んでいきたい」と話している。