岡山県鏡野町の古刹を中心に県北各地で撮影が行われた日本・スペイン・シンガポール国際共同制作長編映画「カオルの葬式」が12月8日から、岡山メルパ(岡山市)で先行上映される。湯浅典子監督(46)が記者会見し、作品への思いを語った。
湯浅監督初のオリジナル脚本長編となる本作は4年がかりで制作。コロナ禍にはじまり、ロシアがウクライナに侵攻するなど、国際共同制作であるがゆえに幾度も撮影の予定変更を余儀なくされながら完成にこぎつけた。
舞台はカオルという名の女性の葬儀。かつて人気脚本家だったカオルは謎の死を遂げる。遺書には、いまは風俗店のドライバーとして生計をたてている元夫の横谷が喪主となり、岡山県鏡野町のお寺で葬儀を執り行うようにとメッセージが残されていた。葬儀会場にはカオルの親友、ビジネスパートナーらが集まるが、皆カオルに対する恨み、ねたみ、憎しみに似た感情を持っている。そこにはカオルの一人娘、9歳の薫の姿もあった。一人の女性の死を通して魂の再生を描いた、愛憎渦巻くダークコメディー。
会見は岡山メルパであり、湯浅監督は「物語は私が実際に経験した親友との別れが元。話したいことはただ一つ。なぜ人は生きるのか、なぜ人は死ぬのか。これだけをずっと考え続け、企画を立てたのが2017年の年末。非常に余白の多い映画なので、ぜひいろんな方にいろんなことを考えてもらいたい」と話した。
岡山県内のロケにこだわった理由を「鏡野町、真庭、津山、笠岡、岡山市、茨城、東京で撮影した。(岡山市出身の)私が生まれ育った場所だからというだけではない。岡山は海も山も全てがとても近くにあって、映像にしてとても美しい地域。さらに日本らしい風景がある。そこで日本の伝統的な葬儀という儀式を撮りたかった。スペイン人の撮影監督のビクター・カタラが非常に美しい映像に仕上げてくれてうれしく思っている」と語った。
また映画のメイン舞台となる寺に鏡野町奥津川西の宝樹寺を選んだことについて「フィルム・コミッションの方と県内30以上の寺を回って、ここしかないと思った。ここの地獄絵図を見て、吸い込まれそうになった。この映画のテーマそのもの」と述べた。