国天然記念物のコウノトリがつがいで岡山県鏡野町内に飛来しているのを23日、同県津山市の愛鳥家が確認した。いずれも京都府綾部市で生まれ育った若い雌雄と判明。野生個体が激減した昭和中期以降、県北でつがいの目撃例はないとみられ、定着すれば繁殖の可能性もある。
目撃情報を耳にした日本野鳥の会の影山克己さん(74)が、数十メートル離れた場所から撮影に成功。交通量の少ない静かな水田地帯で、2羽がつかず離れず歩き回りながら小魚やカエルなどの餌を探していたという。
写真を拡大し、個体識別のため装着されている足環のカラーパターンを調べた結果、綾部市内で一昨年4月にふ化した2歳のオスと昨年5月にふ化した1歳のメスと判明。オスの方が一回り大きい。メスは2020年から津山市の田邑地区に居着き、同町内にも飛来していた個体ではなかった。
コウノトリは体長約110センチ、翼開長約2メートル。アジア東部に分布し、かつて日本では各地に生息していたが、乱獲や農薬の多用によって激減し、1970年代に野生個体が絶滅。国内最後の生息地だった兵庫県豊岡市の県立コウノトリの郷公園が保護・繁殖させ、2005年から放鳥に取り組んでいる。環境省、IUCN(国際自然保護連合)などが絶滅危惧種に指定。県内には近年、数羽が飛来しているが、ペアは目撃されていなかった。
影山さんは「同じ地域で育った若い2羽が住みやすい地を探して飛来したのだろう。すでに繁殖期は過ぎているものの、そのままペアで過ごす習性もあり、餌となる生物層が豊かならば居着いて来春には営巣、抱卵する可能性もある。驚かさないために詳細な情報は明かさない。地域住民にもそっと見守ってもらいたい」と話している。