19日に行われた新春恒例の宮中行事「歌会始の儀」で、約1万5000首の一般応募の中から岡山県真庭市の元岡山県職員・岡田耕平さん(75)の和歌が佳作に選ばれた。「思ってもみなかったので驚いている」と喜びをにじませる。
佳作16首の中で、岡田さんの作品は「炊事場は土間で三和土(たたき)で竈あり水瓶ありて若き母あり」。今回の題「和」について考えている時に、家の土間を赤土や砂利、消石灰など塗ってたたき固めた「三和土」が浮かび、幼い頃に自身が住んでいた古い日本家屋の様子や、かまどの火、炊事に勤しむ母の姿を思い返して詠んだ。
岡田さんは現在、真庭市の農業委員として勤めながら、市内の愛好家たちが集まる「真庭短歌協会」の代表も務めている。作歌をライフワークとし、14年前から積極的に新聞やテレビの企画に投稿。4年前から毎年歌会始の儀にも応募し、積極的に活動している。
県職員時代は農林部畜産課に所属し、家畜保健衛生所などに勤めていた。短歌を始めるきっかけとなったのは退職して畜産協会に再就職した時のこと。2010年に宮崎県で口蹄疫が流行し、獣医師として防疫支援のために駆け付けた際、多くの牛や豚が殺処分されるという現状を目の当たりにした。その時の痛ましい光景や体験を作品にして新聞に投稿したところ入選。歌を作る意欲が高まり、これを機に地域の短歌会「落合短歌会」に入会したという。
短歌の魅力について「作品を通して自身の思い出や感動を多くの人と共有できることがおもしろい。だから歌会で作品を批評し合いながら仲間と気軽に楽しむことが大切」と話す。そのうえで「次は入選したいという思いもあるが、一番は地域での短歌の興隆。若い人たちにも参加してもらえるように頑張りたい」と語った。