勝央町教委は、明治期の洋風建築で国登録有形文化財になっている「旧勝田郡役所庁舎」(勝間田)の保存活用に向け、今春から改修工事に着手する。耐震補強をするとともに往時の内外装を復元し、歴史資料の展示室やギャラリーなどを設ける計画で、2023年度中の完成を目指す。
旧勝田郡役所は、県内で唯一残る郡役所庁舎で1912(明治45)年、旧出雲街道沿いに建てられた木造2階建て延べ592平方㍍。外観は三角屋根の塔屋と千鳥破風のペディメント、アーチ型の正面玄関が特徴的で、内装では明治期の洋風建築らしい格天井が施されている。旧遷喬尋常小学校舎(国重文 真庭市)などの近代洋風建築を県下で数多く手掛けた建築技師・江川三郎八(1860―1939)の設計とされ2016年、登録文化財に選ばれた。
郡役所は1926(大正15)年に廃庁となり、昭和期には増築されて勝央町役場となった後、82年に改修されて郷土美術館としても使用された。現在は郷土資料の保管場所として活用。平時は開放しておらず年1回、9月の「街道祭」に合わせて内部を公開している。
改修工事は、文化庁補助事業として2019年度末に策定した同庁舎保存活用計画(20〜30年度)の一環。計画では、1階は広間を古文書や遺跡の出土物などの展示室、ほかの部屋は来場者の交流やワークショップ、地域活動の研修など多目的に活用する。2階は議場だった広間などをギャラリースペースとして町内外の個人や団体の展示用などに貸し出す。総事業費は約2億3000万円。
現時点での間取りや内装の一部は、かつて町役場として執務しやすいよう手を加えたり、美術館として絵画を掛けやすい内壁を張るなどしており、今回の改修で当初の姿に近い状態に復元する。本来の内壁の一部には、割り竹と麻による「木舞組み」に漆喰(しっくい)塗りが施されている。
本年度については、3月末までに床全面をはがし、基礎を補強する。新年度は、内外装の壁周りを中心に進める予定。現在、外装の板壁はごく淡い緑色、内装の壁や天井はベージュ色だが、これらは美術館時代に塗られたとされ、塗装膜を調査して当初に近い色にするという。
町教委では「歴史的な建造物を後世に残すとともに、地域住民や町外から訪れる人たちにも有効に活用してもらうことを念頭に、改修を進めていく。工事期間中の公開も検討する」としている。
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今春から改修に着手する旧勝田郡役所庁舎の外観。三角屋根の塔屋やアーチ型の正面玄関が特徴的