県古代吉備文化財センターが行っている桑山古墳群=岡山県津山市=の発掘調査で、5号墳の横穴式石室内から特殊な形の須恵器「鈴付き高杯(たかつき)」がほぼ完全な形で出土した。県内6例目。一連の桑山、桑山南、細畝の3古墳群の調査では特殊須恵器の出土が相次いでおり、地域一帯に築かれた佐良山古墳群を特徴づける新たな成果の一つと言えそうだ。
5号墳は6世紀後半に築造されたと考えられる円墳。鈴付き高杯は脚部に玉を入れ、鈴のような音が鳴る土器で、遺体を納める玄室の入り口付近で発見された。高さ18センチ、脚部下端の直径12センチ、上部の杯の直径13センチ。脚部の上部を少し膨らませ、透かしを入れて鈴にしているほか、表面に櫛(くし)のような工具で刺突したとみられる細かい模様もある。鈴付き高杯は全国で30例ほど確認されているといい、桑山南1号墳でも出土している。
同センターは2018年1月から3古墳群を調査。特殊須恵器としては二つの鈴付き高杯のほか、▽複数の小壺が付いた「子持ち壺」(桑山5号墳)▽杯が載った「子持ち器台」の破片(桑山南3号墳)▽ひしゃくをかたどった器で県内2例目の「扁壺(へんこ)」の破片(細畝3号墳)―などが見つかっている。市が行った桑山南4号墳の調査でも特殊な須恵器が出土した。
調査を担当する尾上元規総括副参事は「こうした特殊須恵器は日本各地で出土しており、畿内地域などから伝わってきたものと思われるが、この付近にかなり集中していることが分かってきた」と分析。その上で「子持ち壺については吉井川下流域で多く出土しており、当地と川を介した関係が考えられる。近畿地方との交流もうかがえるほか、出雲産の玉類も見つかっている。佐良山地域は出雲街道や津山往来、吉井川といった主要な交通ルートに近く、各地との交流の中で須恵器についても品や情報を得やすい環境にあったと思われる。こうした点で佐良山古墳群を再評価できるのではないか」と考察する。
また、桑山5号墳では石室内から約100点と多量の須恵器が出土。「現在のところ窯は見つかっていないが、埋葬されたのはこの近辺で須恵器の生産に携わった集団の可能性も考えられる」と話している。
桑山古墳群(平福)の発掘調査/岡山・津山市
- 2020年8月29日
- 歴史・文化