害虫が持ち込む病原菌による「ナラ枯れ」が県北部で広がる中、貴重な天然林を保有する県立森林公園(鏡野町羽出、上斎原)でもミズナラの被害が深刻化している。今年はこの4年間で最もひどく、魅力である中国山地本来の自然景観や生態系が損なわれかねない状況だ。
ナラ枯れの原因は、体長5㌢ほどの甲虫・カシノナガキクイムシ(カシナガ)。幹に穴を開けて入ると菌が増殖し、根から水や養分を吸い上げる管を詰まらせるため、重症化すれば葉は赤茶けて枯死する。
同公園は標高840〜1100㍍に位置し、334㍍に原生林を含む森と渓流、湿原などがある。ミズナラはブナと並ぶ奥山の広葉樹林の主要木で、園内では2016年から被害を確認。地元の森林組合に委託して衰弱した木を伐採し、駆虫のために燻(くん)蒸処理しているが、今秋の調査では新たに約600本にカシナガの痕跡が見つかっているという。遊歩道の周辺でも切り株が目立ち、野積みになった幹もあるため、散策するハイカーらも違和感を隠せない。
岡山市の会社員男性(56)は「痛々しい眺めになってしまい残念。急激に枯れてきたようだが、これ以上ひどいことにならなければいいが」と心配する。
現時点でナラ枯れの特効薬はなく、カシナガの駆除には多くの人出を要するため、県下的にも被害が広がる勢いに追いついていない状況。
同公園には毎年4月下旬〜11月末にかけて県内外から愛好者ら約4万人が訪れており、管理する県林政課は「すでに奥地にまでまん延しつつあり、全量を駆除するのは難しい。来園者の安全確保の観点から優先順位をつけて対処していく」としている。
県内のナラ枯れは09年から真庭市と同町で確認され、カシナガの大量発生の原因ははっきりしない。コナラやミズナラ、カシ、シイなどの樹種が被害を受け、昨年度は県全体で約4000立方㍍が伐採されている。
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ナラ枯れの伐採跡が痛々しい公園内の森林(かえで園地付近)
森林公園でナラ枯れ深刻化
- 2020年11月11日
- 自然