岡山県勝田郡奈義町を中心にした美作地域の民話で知られる「三穂太郎(さんぶたろう)」の手足をまつっている鳥取県智頭町三吉の因幡若一宮(にゃくいちぐう)河野神社に、手や足をかたどった木製の「形代(かたしろ)」を奉納する珍しい習わしがある。古くから四肢の病やけがに効験があるとして、作州一円からも多くの人が参拝。30日に小規模で大祭を開く。
同神社は「にゃくいちさん」とも呼ばれる。手や肩など体に痛みのある人が、崇敬者から奉納されている手形で患部をさすると霊験があると伝えられる。
神社によると、形代の風習が始まった時期は定かではないが、その縁起は京まで3歩で行った巨人伝説の主人公・三穂太郎に求めることができるという。里人から親しまれていた三穂太郎の死後、その体は因幡と美作の国境・那岐山を中心に分かれ、頭部は奈義町関本の三穂神社、かいな(上腕)や足は河野明神にまつられた、と伝承されている。
三穂太郎の手足がまつられていることから、美作地域からの参拝者も多い。奉納された形代を神前でお払いを受けて持ち帰り、身近に置いて祈念。願いがかなった時には心を込めて自分で形代を作製し、「おかげ参り」をして、倍返しするのが習わしという。神前には名前や願い事が記された手形がずらりと並ぶ。
大祭は毎年旧暦の4月8日に開いており、今年は30日午前9時から開催。手や足、肩などが痛い人の祈願のほか、家内安全や五穀豊穣(じょう)などを願う。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、規模を大幅に縮小して開く。
河野通仁宮司(72)は「自粛も考えたが、伝統行事であり、やめるわけにはいかない。このご時世なので除厄などを祈りたい」と話している。
問い合わせは、同神社(0858-78-0116)。
p
1神前に奉納されている手や足をかたどった木製の「形代」(かたしろ)