岡山県津山市にある津山洋学資料館の「オムニバス講演会」が1月28日、同館GENPOホールで開かれ、津山藩医・箕作阮甫(みつくりげんぽ)の養子で地理学者の箕作省吾が1844(天保15)年に刊行した世界地図「新製輿地全図(しんせいよちぜんず)」にまつわる研究報告に愛好者ら約80人が聞き入った。
梶村明慶学芸員が、フランス製世界地図(35年刊行)を基に最新の地理情報を盛り込んだ全図の特徴について「五大陸と国々の領土を彩色で示し、列強諸国の植民地を記号で表記して帰属関係を明確にしている」と解説。26歳で亡くなった省吾が結核を患いながら全図とその解説書「坤輿図識(こんよずしき)」を刊行し、明治維新の原動力となった坂本龍馬らに影響を与えたことにもふれた。
後半は小島徹館長が、兵庫県明石市に残る同全図から作られた地球儀をクローズアップ。張子製で45(弘化2)年、明石藩医・藤村宗禎が藩主の命で手掛け、かなり劣化しているものの同全図の特徴が見てとれることを画像で説明した。
藤村家と箕作家の関わりについては「直接結びつく資料は確認されていないが、明石藩主と津山藩主は同じ越前家の一族。藤村が蘭学者としてこの図を高く評価していたのは間違いない」と強調した。