県北舞台長編映画製作「カオルの葬式 (仮タイトル)」

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鏡野町の古刹など県北を舞台にした長編映画「カオルの葬式(仮タイトル)」がクランクインを待っている。メガホンを取るのは岡山市出身の湯浅則子監督(45)=東京都。撮影・音楽監督をスペイン人が務め、シンガポールの配給会社が海外配給・販売パートナーとして参画する国際共同制作作品は初のオリジナル脚本長編。コロナ禍にはじまりウクライナ危機と幾度も撮影開始の予定変更を余儀なくされながら、この夏以降のクランクインを目指している。
 湯浅監督は2007年木下プロダクション(現・TBSスパークル)在籍時監督デビュー。短編映画「空っぽの渦」は国内外の映画祭で17冠を受賞した。アマゾンプライム連続ドラマ「日本をゆっくり走ってみたよ〜あの娘のために日本一周」は自身の企画でプロデュースとメイン監督を務めている。
 今作では葬式を通じて「人を送る」ということを真正面から描く。舞台はカオルという女性の葬儀。彼女が残した遺書には、離婚した元夫がカオルの葬儀の喪主になるようにとメッセージが残されていた。この葬儀が元夫にとっても、残された一人娘にとっても人生の一歩を新たに踏み出すきっかけになる―。戦い続けた1人の女性の人生の最期を描く、皮肉と愛が詰まったダークコメディー。
 「テーマは死ぬこと、生きること、そして、送るということ」と湯浅監督。「日本の葬儀は固有の文化ですが、人が亡くなるということは全人類が共通して体験すること。日本語を話す人は世界に3%しかいません。世界中の人たちに見てもらいたいという思いから、プロデューサーのシモエダとともに国際的な座組みで製作することにしました」。
 今作の企画をスタートさせたのは2017年。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうようになる前だが、大きく影響を受けているという。「物語は私が実際に経験した親友との別れが元。コロナ禍で葬儀ができなかったりするなか、多くの方が死や人を送ることについてより考えるようになったのではないでしょうか。そんな時代のせいか、多くの方から共感とご支援をいただいています」。
 撮影場所は鏡野町の古寺を中心に津山市や蒜山、笠岡市など。父親のいとこが湯原温泉で旅館を営んでおり、小さなころから県北のまちに親しみを感じていたという。「脚本を書いていて、最初から美作地域をイメージしていました。前述のアマゾンプライム連続ドラマでは、日本を3周くらいしましたが、岡山出身ということをさっぴいても、撮影地としての魅力はすごくある。そして映画にふさわしいお寺と出会え、本当に喜んでいます」。
 当初は昨年秋ごろのクランクインを予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延長。今年に入ってオミクロン株が大流行し、スペインのスタッフが水際対策のためにまたもや足止めをくらった。現在も1日の入国制限は続いているが、ビザ取得などにチームで尽力し、撮影開始の準備を進めている。
 スタッフの入国のめどが明確になれば、来年上半期での映画完成と地域特別上映会などが見えてくる予定。「ウクライナ危機が驚くようなタイミングで始まって、人の死の普遍性を改めて強く感じています。やはり、今年ちゃんとつくらないといけないと強く思いました」。
 「カオルの葬式」を制作するPKFP PRTNERSでは、長引く撮影の順延のため、企業・個人の協賛を募っている。また、第2弾となる地域密着型クラウドファンディング「晴れ!フレ!おかやま」でも今後支援者を募る予定。
 問い合わせは、Eメールmikanoriko.mikanoriko@gmail.com
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映画『カオルの葬式(仮タイトル)』でメガホンを取る湯浅監督(今年3月24日、みずの郷奥津湖で)


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