岡山県真庭市教委は、同市上河内の熊野神社本殿を10日付で市重要文化財に指定した。神社本殿として市内有数の規模を有し、建築彫刻も巧みで、江戸後期に地域で活動した立田流大工の代表的作例といえる。
同神社は、地区の北部山間に鎮座する古社で、社伝では永観年中(983〜985年)に紀伊国熊野からの勧請にかかり、地域の鎮守として歴代の領主から崇敬を受けてきたとされる。
隅木入春日造で、三間社の社殿。建築は1850(嘉永3)年の棟札が伝来しており、大工棟梁として「竜(立)田流大工棟梁 当(上河内)村下分上組 柴田安太郎藤原信光」の名前がある。正面には向拝が付され、身舎(もや)の三方に縁が巡り、長押(なげし)上には多く海にまつわる彫刻が施されている。正面入り口は2枚の引違戸となっており、また社殿内部の柱は通常丸柱となるが、面取りで仕上げられているなど、独特な要素が見られる。
立田流については、いまだ不明な点も多いが、本殿を手がけた柴田安太郎は、同流の杉山亀蔵とともに、津山城下の妙法寺三十番神堂(津山市西寺町)を手がけている。その後も、亀蔵の子・杉山松四郎が津山安岡町のだんじりをはじめ、鏡野町の福泉寺庫裏・山門、一の谷稲荷神社本殿を造立したと伝わる。また、真庭市宮地の遍照寺の山門も同流派の手になるとされるなど、その足跡は広く周辺地域へと広がっている。
市の指定文化財は205件になった。
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1熊野神社本殿(真庭市教委提供)
真庭市教委指定 熊野神社本殿を市重要文化財に
- 2022年5月11日
- 歴史・文化