津山市は1日、市出身の新興俳句の旗手・西東三鬼をたたえて設けた「西東三鬼賞」に、北海道旭川市の無職・松田佳子さん(57)の句「マスクしてしづかな国となりにけり」を選んだ、と発表した。
松田さんは2003年度の第11回から応募を続け、佳作や入選の受賞歴がある。作品について「2020年は未曽有のコロナ禍となり、世界中が恐怖と悲しみに包まれた。地震、台風などの被害とは真逆で、住む場所の様子は全く変わらないのに人の姿がない。形の見えないものにおびえ、人間同士の触れ合いが禁忌とされる。経験したことのない状況に不思議な静けさを感じた」という。「望外の喜びもあるが、同時に自分が受けていいのかと恐縮している」と話す。
今回は45都道府県の556人(18〜95歳)から4228句が寄せられ、現代俳句協会副会長の寺井谷子さんら3人が選考。三鬼賞(大賞)のほか秀逸10句、入選30句を決めた。大賞作について寺井さんは「コロナ禍という先の見えぬ時代を生きねばならない中、『しづかな国』でどのような思いを深めてゆくか。そう問いかける一句」と講評した。
美作地域からの入賞は4人で、秀逸に押入の保田基さん(67)の「父の日や甘き匂いの殺虫剤」。入選に、川崎の妹尾武志さん(87)の「疫病禍や大きな音の蝿叩」「夜長人にれがむ美作俳諧史」、美咲町打穴下の黒瀬紘子さん(78)の「三鬼の忌端のめくれた英和辞書」、南方中の杉山武明さんの「蓮守の小屋に女の枕かな」が選ばれた。
今回で28回目。新型コロナウイルス感染拡大を受け、4月2日に予定していた表彰式、3日の曲水の宴は中止する。
また、同賞委員会は入賞作の小冊子を作製。希望者には200円で販売している。
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松田佳子さん