岡山県西粟倉村でウナギの養殖を手掛けるエーゼロ(牧大介社長)が、近年著しく数が減っているニホンウナギの持続可能な養殖方法の模索を目的に16、17の両日、専門業者の基準によるパイロット審査を受けた。水産養殖管理協議会(ASC)の国際認証取得を見据えた取り組みという。
同社は旧影石小学校(同村影石)体育館を活用して平成28年から養鰻(まん)業に着手。抗生物質無投薬の安全な飼料を用い、地域やネットでの販売を展開し、昨年は東南アジア産のビカーラ種約3000匹を出荷した。ニホンウナギは今春から育てている。
ASC国際認証取得には、「餌や廃棄物の適切な管理」「環境への配慮」「天然個体群への影響の軽減」など7分野約100項目の基準を満たす必要があり現在、対象はサケ、ブリ、エビなど8魚種。ウナギは資源管理が確立されていないため、対象外とされている。
17日は環境コンサルなどが専門のアミタ(東京都)の審査員が養殖水槽を見て回り、担当者の話を聞きながら認証対象魚に準じた基準で状況をチェック。
小川直也主任審査員は「餌やりや水の管理については認証基準を満たす良好な管理ができている。ただ対象魚にアプローチするための課題は多い」と話す。
ニホンウナギの水槽では現在、約2400匹が体長10センチほどに成育しており、このうち半数にマーキングをして来月、村内を流れる吉野川上流に放流し、生存状況を追跡調査する計画。またパイロット審査の結果はホームページで公表する。
岡野豊同社自然資本事業部長は「資源管理ができるまでには息の長い取り組みになるが、養鰻業界に一石を投じてみたい」と意気込む。
エーゼロは27年創業。同廃校舎を拠点に地域資源を生かした建築業、獣肉加工流通業にも取り組み、社員は移住の若者を中心に25人。
ニホンウナギは、稚魚の乱獲などによって激減しており、25年に環境省、26年に国際自然保護連合が絶滅危惧種に指定している。