「お大師さまがこのお寺に行きなさい、と言ってくれたように思います」―。
今年4月に弘秀寺(岡山県苫田郡鏡野町中谷)の住職に就いた木下友真さん(52)。直前まで高野山真言宗総本山金剛峯寺の職員として、奥之院でいまも衆生救済のため「即身成仏」として祈り続ける弘法大師・空海のお世話をしていた。
牛窓町(瀬戸内市)出身。代々鍛冶屋の家系で親は鉄工所を経営していたが、社会福祉を志し高野山大に入学。仏教は福祉そのものだと気が付き、「お坊さんとして福祉に携わりたい」と思うようなった。
本山採用後は奥之院や布教を研究する教学部を経て社会人権局に異動。「御宝号念踊運動」を掲げ社会の一員として福祉活動に取り組んだ。50歳になって再度奥之院に配置されると、上司から岡山県北の山中にあるお寺の跡を継ぐよう相談を受ける。「定年を前に大決断でした」と振り返る。
弘秀寺は724(神亀元)年の行基の開基とされ、本尊は薬師如来。平安時代後期の京の仏師による十一面観音像(県重文)が鎮座する古刹だ。「環境の良いお寺。信仰心の熱い方が多い土地」と話す。弘秀寺は美作八十八ヶ所霊場の一つ。「仏に会いに来てください」
「一番の課題は地域の過疎化」。阿字観(瞑想)の指導資格を持つ木下さんは「寺から里へを実践したい。仏教を通じ人の心を楽にするお手伝いができれば」と意気込む。「この寺の法灯を絶やすわけにはいきません」
ひと
木下友真
弘秀寺住職
プロフィル
鏡野町中谷。和歌山に妻と大学4年の長男。趣味は打楽器演奏。52歳。
鏡野町弘秀寺住職 木下友真さん
- 2021年6月29日
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