岡山県鏡野町富西谷の布施神社で5日、県重要無形民俗文化財「お田植祭」が4年ぶりに行われた。五穀豊穣(ほうじょう)を祈願するユーモラスな神事を多くの見物客が見守った。
獅子練りで清めた後、境内を田んぼに見立て、牛にふんした子どもが農具を引く「荒起し」と「代かき」、男衆が太鼓に合わせてサカキの葉をまく「田植」などを繰り広げた。
最後に殿様が家来の福太郎を従えて登場。福太郎は山盛りの飯を食べてもらおうと差し出すが、殿様は食べようとしないで首を横に振るばかり。ようやく殿様が口を開けると、今度は福太郎がぱくりと食べ、のどに詰まらせて苦しみ、観衆の笑いを誘った。こっけいな所作を殿様が笑うとその年は不作になると言われるが、殿様は最後まで表情を変えず、豊作を「約束」して祭りを終えた。
熱心に撮影していた同県奈義町上町川の元高校教諭・赤座匡さん(88)は「子どもの頃の田植えを思い出して懐かしい気持ちになった。伝統文化を守ることは大変だと思うが、地域のつながりができるので大切に守り続けてほしい」と話していた。
お田植祭は地区ごとの氏子が頭屋(当番)として開催してきたが、過疎化、高齢化により存続が危ぶまれてきたため、地域全体で継承しようと2020年に「布施神社行事実行委」を発足。コロナ禍を経て今回が最初の奉納神事となった。