明治期の洋風建築で、廃業から約10年になる岡山県津山市田町の旧杉山医院が取り壊されることになった。マンション建設計画に伴い、地域に長年親しまれた趣ある建物が姿を消すことになり、市民から惜しむ声が上がっている。
関係者によると、旧杉山医院は明治後期に外国人牧師が住宅として建てた洋館と後に増築した病棟の木造2階建て延べ約530平方メートル。耳鼻科の医院として大正期に開業し、1960年代に歯科を併設して二代にわたり、2012年ごろまで営まれた。設計者は不明だが、レンガ造りの暖炉の煙突や独特な仕上げのモルタル壁など洋風の意匠が特徴的。老朽化が進んだ今は、外壁の大半を覆うツタが歳月を物語っている。
二代目の長男で所有者だった広島市の会社経営・杉山潤さん(71)が諸事情で隣接する住宅を含む用地と建物を売却。取得した総合不動産会社では、今夏にも建物を解体撤去し、マンション建設を進めるという。
杉山さんは「医院を営んだ祖父や父母との思い出がしみついた建物で惜しいが、維持管理の難しさなどからやむなく手放した。せめてマンションが建つことで少しでも中心市街地のにぎわいにつながれば」。
これまで市内で歴史的建造物の保存に尽力している東一宮の歯科医・豊福恒弘さん(70)は「文化財になりうる貴重な近代洋風建築。今となっては致し方ないが、市の美術館にでも活用されればと願っていただけに非常に残念」と話した。
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取り壊される近代洋風建築の旧杉山医院
岡山県津山市 田町の旧杉山医院が取り壊される
- 2022年5月19日
- 歴史・文化