新型コロナウイルス感染拡大を受けて県内に緊急事態宣言が発令される中、飲食店は休業や時短営業を余儀なくされている。その影響を直接受けるのが取引のある小売店や製造業者だ。「収益は減ったが、どうにもできない」―。津山朝日新聞社がある田町だけでも、現状を嘆く声がいくつも聞かれた。
土肥酒店は、津山市周辺のレストランや居酒屋、スナックなどから酒類の注文を受けてきたが、現在は皆無の状態という。卸業社への返品は利かないため、発令に合わせて在庫を5割減らした。倉庫の壁際に積み上げられているはずの製品のケースは、どの銘柄も数個にとどまる。
外出自粛が呼びかけられる中で一般の客も減ったといい、店主の土肥祥嗣さん(78)は「お手上げ。これほど酒が売れないのは初めてだ。半月ほどの発令期間だから我慢するしかないのだろう」とため息をつく。
向かいにある幸屋精肉店は、近隣の居酒屋などに牛肉を販売しているが、注文は5割減少した。緊急事態宣言が出たことでバーベキューを楽しむ家族も少なくなり、小売の方も低調という。
「テレビのニュースなどを見ていて飲食店の休業はよその話だと思っていたが、まさか身近に起きるとは。売り上げを計算するのが怖い」。店主の上田進治さん(58)は不安そうに話す。
田村製麺は、収益が例年と比べて3割近く減少した。美作地域の小中学校にも納品しており、臨時休校があった昨年よりも全体の落ち込みは少ないものの、むろん飲食店の引き合いが激減したのが大きく響く。取引先となっている高速道路のサービスエリアのレストランだけを見ても7割減という。観光客が戻らない限り、回復は見込めない。
県は飲食店には協力金を支給。取引業者を含む一時支援金制度も4月に創設したが、田村製麺は条件を満たさず断念した。前社長で現在会長の田村昌生さん(63)は「昨年から借り入れでどうにかするしかない状況。とにかく人の動きが戻らない限り、状況は大きく変わらないだろう」と肩を落とした。
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飲食店の注文がなくなったという土肥酒店の倉庫。壁際に積み上げられるはずのケースは少ない=24日午後
飲食店時短営業、取引業者に影響
- 2021年5月25日
- 経済・産業