高尾北ヤシキ古墳煙突発表

歴史・文化 高尾北ヤシキ古墳煙突発表
         

 県古代吉備文化財センターは16日、調査している高尾北ヤシキ古墳(高尾)の石室で、かまどや炉の煙突として使われたと考えられる「筒形土製品(つつがたどせいひん)」1点が県内で初めて出土したと発表した。同土製品は韓国での出土例が多いほか、近畿地方などでも出土しているが、国内の墳墓で見つかったのは数例のみ。同センターは「美作地域の渡来系文化を考える上で貴重な資料」としている。
 同古墳は全国的に知られる佐良山古墳群の一部で、皿川の西側にある丘陵裾部に位置。国道53号・津山南道路の整備に伴い、昨年10月から調査している。6世紀末に築かれた直径約13㍍の円墳で、墳丘中心に設けられた横穴式石室は残存長6・5㍍、最大幅1・7㍍。石室内から、焼き物のひつぎ「陶棺(とうかん)」のほか、須恵器と土師器といった器、鉄鏃(てつぞく)などの武器、馬具、ガラス玉が出土した。
 筒形土製品は陶棺の脇から横倒しの状態で見つかった。高さ1㍍、最大径45㌢の円すい形で、赤褐色の土師質に焼き上げられている。細くすぼまる上部には直径15㌢の煙出しの孔(あな)が斜めに開けられている。
 国内では近畿地方を中心に数十遺跡以上で見つかっているが、墳墓から出土した例は大阪府堺市の陶器千塚29号墳など数例しか知られていないという。韓国や国内の出土例から、煙を屋外に出すための煙突と考えられるが、今回の出土品にはススの付着は見られず、使用した痕跡は確認されていない。
 高尾北ヤシキ古墳の周辺の古墳では渡来系の習俗に関わる遺物がいくつか出土しているほか、近畿地方のものとよく似た陶棺も見つかっている。同センターは「近畿地方で行われた渡来系の習俗が、鉄生産や窯(よう)業生産などの技術とともにこの地に伝えられたとも考えられる」としている。
 同センターは本年度調査した同古墳を含む4遺跡の調査成果をセンターホームページと公式動画サイトで4月30日まで公開している。


1陶棺の横から見つかった筒形土製品(県古代吉備文化財センター提供)

2かまどや炉の煙突と考えられる筒形土製品


 渡来系文化に詳しい亀田修一岡山理科大学教授(考古学)の話
 この形の「筒形土製品」は5〜7世紀の朝鮮半島の百済で比較的よく見られ、国内では近畿地方を中心に出土例がある。ただ、古墳内で見つかる事例は極めて珍しく、特殊なあり方だ。
 2018年から行われている佐良山古墳群での一連の調査では、鉄鐸(てつたく)や皮袋形土製品など、朝鮮半島との関係を示す遺物がいくつか出土している。これらを踏まえると、高尾北ヤシキ古墳に葬られた人物は渡来系の人、または、朝鮮半島に関係する人物の可能性がある。
 今回の発見で、県南だけでなく美作地域にも最先端の技術や情報が伝わってきていたことが推測でき、非常に貴重な発見だ。新たな渡来系文化が確認できたことは、今後の津山地域を考える上で大きな意味を持つだろう。


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