岡山県教育委員会は、県文化財保護審議会の答申に基づき、新たに県指定とする重要文化財5件を公表した。このうち美作地方関連は、1920(大正9)年に建てられた「旧妹尾銀行林田支店」(津山市川崎)と、木山神社(真庭市木山)の木造狐像1対で、大正期以降の建造物の指定は初。これらが加わり、県重要文化財は508件となる。
旧妹尾銀行林田支店は、伝統的な寺院建築風の本館とレンガ造の倉庫や塀などで構成され、独特の建築として質の高さを評価。本館内部は一空間で、吉野杉の鏡板を用いた二重折上格天井を有する。レンガ造の倉庫はイギリス積の重厚な洋風建築。1975年に所有者から津山市に譲渡され、洋学資料館として使われた後、現在は「ポートアート&デザイン津山」として美術展などに活用されている。
木山神社の木造狐像は、宝珠をくわえた珠取像(像高53センチメートル)、米蔵のかぎをくわえた鍵取像(同52センチメートル)の一対で、同神社本殿(県重文)に安置されていた。主にキリ材を用いた寄木造で、像容から室町時代に作られたと推察され、現存例は希少。現在は県立博物館(岡山市)に寄託されている。
県教委文化財課では「旧妹尾銀行林田支店は、仏殿の意匠を用いた本館が特異であるとともに、伝統的技法と当時の新たな技術を駆使した銀行建築として貴重。木造狐像は全国的に見ても現存例は希少で、稲荷信仰史の観点からも重要な彫像」としている。
美作地方以外は、安養寺(倉敷市)所有の「銅造誕生釈迦仏立像」と「銅造如来立像」、千手院(井原市)に伝わる「大般若波羅蜜多経」。今回の5件は3月上旬の県公報に告示され、正式指定となる。