家族の介護や家事、サポートといった大人の役割を子どもや若者が担う「ヤングケアラー」を考えるフォーラムが9日、美作大学(岡山県津山市北園町)で開かれ、参加した学生や市民らが講演を聴くなどして、その実情に対して理解を深めた。
社会福祉学科の学生や民生委員、地域団体、医療福祉関係者ら約100人が参加。いち早く実態調査に乗り出し、支援に取り組むNPO法人・ふうせんの会を有志とともに立ち上げた大阪公立大学現代システム科学研究科の濱島淑恵教授(54)と、同会に所属する当事者で現在市内在住のケアマネージャー・酒井清旭さん(42)=やさしい手倉田居宅介護支援事業所管理者=が登壇し、講演を行った。
濱島教授は調査などから明らかになった要介護状態の祖父母、疾患をかかえる親、知的障害児の兄弟らを介助する子どもたちの様子を説明。中でも生活に過度な負荷がかかり、学業や進路、体調に大きく影響が出ている点、さらに周囲に相談できない状況に陥っており、問題が表面化されにくい点を指摘。「大人でも苦労する役割と責任を負うことはとても大変。周囲が気づき、声を掛けて医療や福祉サービスにつなげる支援が必要」と呼び掛けた。
続く酒井さんは、幼いころからの家事手伝いや、大学生時代に経験した重病の母親の介護が漫画「お母さんのおむつを替えた日」(一ノ瀬かおる著、福田旭協力、竹書房出版)になったと述べ、当時の体験とその後の人生について話した後、「一番怖いのが当事者の孤立。悩みを相談できるといった協力者がいることで光が差す」と強調した。
講義を聴講した地域活性化などを目的に活動する美作市の一社・ヨリビト(縁人)の澤谷洋子代表(65)は「行政と民間が手を携えて子どもや若者たちを支援する体制になれば。そのために私たちにできるのは実情を理解してより多くの人に知ってもらえるように啓発していくことだと思う」と話していた。
この後は「ヤングケアラー養成講座」が開催された。