高田小学校=岡山県津山市下横野=の6年生17人が4日、上田手漉和紙工場=津山市上横野=で、地元の伝統工芸品・横野和紙を使った”世界に一枚だけ”の卒業証書作りに励んだ。
児童たちは、工房の7代目・上田康正さん(58)の指導を受けながら、手漉(す)き紙製法の一つ「流し漉き」に挑戦。竹簀(たけす)が敷かれた「桁(けた)」を漉き船の中に入れて、砕いたミツマタなどを混ぜた「紙素」をすくい、縦横に動かして繊維を絡めていった。紙の厚みが均一になるようにするには、桁をすばやく丁寧に動かすといった技術が必要で、苦労しながらも懸命に取り組んでいた。
吹井智稀君(12)は「漉き船の中の液体は冷たく、寒い中で和紙を作るのは大変。苦労に耐えながら地元の職人さんが伝統を守っていったと思うと深い歴史を感じる。卒業証書は一生の思い出になる」と話していた。
この後、康正さんの父親で県重要無形文化財保持者の職人・繁男さん(81)から地元産の和紙が箔合(はくあい)紙として国内外で活用されている話などを聞いた。
同校では地域の伝統を伝承していくのを目的に学びを深めており、2006年度から横野和紙を活用した証書づくりを行っている。1週間乾燥させて完成した後、植月美穂校長が卒業生の名前を書き入れ、来年3月19日に予定している卒業式で手渡す。