参道が陸上自衛隊日本原演習場内に位置し、容易に参拝できないことから“幻の神社”とも言われる岡山県勝田郡奈義町の「瀧神社本社」。来年春に33年に1度の式年御開帳を迎えるにあたり、瀧神社は本社近くに位置する「母御の宮」を66年ぶりに修復しようとクラウドファンディング(CF)を立ち上げた。目標金額200万円を目指して9月13日まで協力を呼びかけている。
同神社は約1300年前に紀州熊野権現を観請して創建され、藤原鎌足の孫・武智麻呂が現在の場所・滝山(標高1197メートル)中腹の本滝(雄滝)のそばに遷宮したと伝わる。後に修験道の開祖・役小角が開山して一帯が霊場となり、江戸時代に入ってからは津山藩主・森忠政が津山城の鬼門の守護神として宝殿や鳥居などを寄進。松平藩以降も人々からあつい信仰を受け、「お滝まいり」と称して参拝する人たちでにぎわっていた。
祭神は伊邪那美尊(イザナミノミコト)で、昨年11月に江戸時代の瀧神社を描いた古文書が発見され、そのうちの一つ「作州瀧太社山内絵図」には、本滝の東方に位置する母御の滝(雌滝)そばの「御水殿(現母御の宮)」にまつられていたことが記されている。

同宮は近代まで建て替えが行われ、熊野信仰と修験道の聖地に建つ社として大切にされていたが、参道の軍用地転用から立ち入りが困難になり、66年前の御開帳時以降は修復できていない状況に。長年の風雨や経年劣化により倒壊が危ぶまれる中、地域の歴史的遺産として次世代に引き継ぎ、かつての山岳信仰の聖地の復活を目指そう氏子らが励んでいる。
二宮祥宮司は「今まで大事にされていた風習や建造物が消えそうになる中、なんとか未来に残していきたいと願っている。しかし資金が非常に厳しい状況となっている。多くの人にこの地域、歴史を知ってもらい、再び信仰の聖地として盛り上がるように励みたい」と話していた。
申し込みは、CFサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で5000円から10万円までの受け付けており、金額に応じて絵馬などの授与品や神社本社へのトレッキングツアー参加といった返礼品を用意している。
