シンポジウム「認知症になっても安心して暮らせる社会(つやま)を考える」が28日、美作学園100周年記念ホール(北園町)で開かれた。美作大学と美作高校の学生・生徒、一般参加者らが当事者の話を聞いて、支え合う地域社会づくりの大切さを学んだ。
認知症当事者の相談窓口「おれんじドア」代表の丹野智文さん(47)=仙台市=が講師を務めた。丹野さんは39歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断されたが、現在も自動車販売会社で働きながら全国で講演活動を行っている。
「認知症とともに生きる」と題して基調講演。どの人が自分の客か分からなくなることが多くなり、診断結果を聞いて「この先どうしたらよいのか不安になったが、子どもたちのためにも会社を辞める選択肢は自分にはなかった。社長からは『毎日笑顔で来てくれてありがとう。会社も私も応援するから頑張りなさい』との言葉があり、今も働き続けることができている」と振り返った。
「葛藤もあったが病気をオープンにしようと思った」と話し、「私の場合は偏見も少なく、助けてくれる人が多かった。認知症になっても環境がよければ笑顔で楽しく暮らせることを知った」と説明。一方で「『やってあげなければ』と思う人もいると思うが、できることを奪わないで待ってあげてほしい。できた時には自信を持つことができる。失敗しても怒らない環境が必要。自立とは、サポートしてもらいながらも、できることを自分ですること」と強調した。「認知症は恥ずかしい病気ではないし、これからますます増えていく。みんなで支え合う社会をつくりましょう」と呼びかけた。
続いて、大学生と高校生の4人が丹野さんとディスカッション。「今後の夢は」との質問に丹野さんは「コロナが明けたら当事者のみんなと富士山に登ること。子どもたちが結婚するまで元気でいたい」と答えた。
美作大学地域生活科学研究所主催。感染症対策のため2回に分けて実施し、約320人が参加した。
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大学生と高校生の質問に答える丹野さん(左)