【ザ・作州人】ちぎり絵作家 髙松ひとみさん 和紙に魅せられて

ザ・作州人
ちぎり絵作家 髙松ひとみさん
         

 今月の「ザ・作州人」は、ちぎり絵作家として活躍している髙松ひとみさん(66)に登場していただいた。ちぎった和紙を重ね合わせることで独特の柔らかさや油彩画かと思わせるような立体感のある人物画が特徴。創作意欲は衰えることなく、来年5月の個展に向け、鋭意制作中だ。


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 作品を見ると絵心のない私でも暖かみや穏やかさが伝わってくる。実を言うとSNSで最初に絵を見たとき、無知でおっちょこちょいな私は恥ずかしながら油絵と勘違い。「えっ、これ紙なの?ちぎって、貼って、なんでこうなるの」と驚いたものだ。


 今回、東京で髙松さんに会い、実物を数点見せてもらったが、それはそれは気の遠くなるような作業であることが容易に想像できた。デッサンをした後、和紙をちぎって貼っていくわけだが、肌の陰影を表現するために下に置く紙の色を慎重にチョイス。ときには、カッターナイフを使用し和紙をこより状にして貼りつけたりもする。

  作品の主流は人物画。シリーズ「男の横顔」は写実的で、この人どこかで会ったような気持ちにさせてくれる。「愛おしい子どもたちへ」では未来を担う子どもの無垢な表情を描いており、童心に帰ったようで自然と心が温まる。

 「人物を表現したい」と話す髙松さん。小学生のころは海に憧れ、海洋少年団で活動した。北中ではバスケ部だったが、津山商では必然だったかのように美術部に入った。 「幼い頃から絵を描くことが大好きで、母がいつもわら半紙と鉛筆を用意しておいてくれました。手塚治虫さんの作品やアニメ “まんが日本昔ばなし”なんかもよく見てました」。美術部では部長として当時の新校舎の外観パース作製を任された。

 大阪芸大へ進学後はシナリオ、アニメーションを学び、卒業制作映画ではスクリプター(記録)を担当。卒業後3年間、副助手として研究室に残った。大阪でカメラマンとして活躍していた大学の同期の秀直さんと1985年結婚。ふたりには「いつかシルクロードに行き、世界の人々の暮らしを自分自身の目で見て体感したい」という共通の夢があり、その年、テントをリュックに詰め込みバックパッカーとして旅に出る。

 まずは西ヨーロッパ6カ国を3カ月、レンタカーでキャンプ場を巡った。途中、パスポートをなくすドタバタ劇もあった。9月に帰国し、すぐに今度は香港から輪行用の自転車を持って中国内陸部へ2カ月。西安、トルファン、敦煌、ウルムチ、カシュガル、昆明を経て帰国した。

 「天安門の前をみんなと一緒に自転車で走りたいという夢が叶い、その年に阪神タイガースが日本一になったこと、たまたま香港の新聞で知りました」

 さらに翌年1986年5月、鳥葬などのチベット文化に興味があったので再び中国・成都から空路でラサに。「旅で出会った方々と今でも付き合いがあるんですよ」と旅の醍醐味を語った。

 これら一連のことが創作のバックグランドになっているのは間違いないが、髙松さんのユニークな経歴はまだある。28歳になる87年、何と夫が実家の郵便局を継ぐために東京・三宅島に引っ越したことだ。

 しばらくは子育てをしながら平穏な生活を送っていたが、2000年に三宅島が噴火。41歳の誕生日には噴煙が上空1万メートルにまで達する大噴火があり、全島避難に。以来、都内に拠点を移し、創作活動を続けている。  

 作品の評価が高まってきたのもちょうどこのころ。2000年に全国和紙ちぎり絵展「優秀賞」受賞、07年には「北日本新聞社賞」を受賞した。

 三宅島に住んでいる時代には家族でホノルルマラソンに出場したほどのチャレンジャー。どう見たって好奇心も旺盛だ。津山にいる若者に向けては「時間ほど平等なものはないので、限られた時間を大切に、見聞を広めてほしい。次にやろうではダメ。いい水も留まっていると、やがて濁るから」とエールを送った。

 自身の今後については「私は和紙の生産地でもある津山に生まれ育った。和紙を漉くことはできませんが、日本各地で作品展示をし、和紙の持つ魅力を少しでも多くの方に伝え、交流を深めたい」と明かしてくれた。

 来年5月に18回目の個展を予定。髙松さんは好奇心旺盛な人生のバックパッカーとして、まだまだ旅の途中にいるようだ。(山本智行)

 ◇髙松ひとみ(たかまつ・ひとみ)1959年生まれ。津山商業から大阪芸大映像計画学科(現・映像学科)を卒業後、副助手に。1982年ごろからちぎり絵制作を始め、結婚、出産後、東京・三宅島に移住。現在は東京在住。

髙松ひとみさん


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