不登校者数の増加が全国的に問題になっている。さまざまな事情を抱える若者たちの受け皿である美作高校通信制コミュニケーションコースでも「前籍校で不登校だった生徒たちが入学、転学してくるケースが圧倒的に増えている」という。通信制の現場から不登校問題を考えた。
文部科学省が昨年10月に公表した2021年度の問題行動・不登校調査では、小中学校の不登校は、前年度から5万人近く増えて、約24万人となり、過去最多となった。
同通信制コミュニケーションコースの生徒数は約140人(3月現在)。その3分の1にあたる約40人が小学校や中学校などでの不登校経験者という。他高校に入学したものの、通えなくなった生徒が転学してくるケースも増加している。同校担当者は「美作地域の不登校者数は減っていない印象」と話す。
同校全日制としても「不登校の生徒を積極的に受け入れよう」という方針のもと、入試では欠席の多さを不利に扱っていない。全日制では、小・中学校時代に不登校経験のある生徒は1学年で20〜30人と1割程度を占めるという。
「不登校になる原因は一つではなく複合的」。通信制の仲田智子教頭はこう話し、背景にはさまざまな要因があるという。
中学校に上がって急に難易度が上がる学習内容、一気に広がる交友関係で感じる息苦しさ、小学校にはなかった先輩と後輩の関係、高校・大学入試に向けた進路選択のプレッシャー…。
家庭の状況も関わる。子ども中心の生活から父母が祖父母の介護に追われ、子に寂しい思いをさせてしまうケース。また父母が40代、50代になると、職場で責任のある立場になるため、子どもに時間をかけられないといったことも原因の一つに。
家庭に不登校の子がいると、その兄弟が不登校になってしまうことも。「不登校になった子に手がかかるため、心のバランスが崩れ、家族そのもののバランスが崩れてしまう」という。
さらに、家族の介護や世話を子どもが担う「ヤングケアラー」も顕在化している。今日的な問題と思われがちだが、「以前から存在している」とする。新型コロナウイルス禍がもたらした影響も大きく、中学時代に不登校だった生徒が、再び不登校になるケースがあった。
通信制では一人ひとりに合ったきめ細かな指導を心がけ、全日制も含めて生徒に関する情報を共有し対応。つまづく前の人間関係、登校時の声かけ、会話を大事にしつつ、コミュニケーションを図って人間関係を築いていく。
同校は1998年に県下でもいち早く「教育相談室」を設置。全日制と通信制の橋渡し役を担うほか、地域の機関などとも連携している。「美作地域不登校支援ネットワーク」の事務局も務め、不登校の解決に努める。
「ゆっくり時間をかければ、だんだん心を開いてくれる。関われば関わるほどかわいい」。仲田教頭は目を細めた。