美作高校(岡山県津山市)が昨年夏行った小学生講座の保護者に行ったアンケートがある。
「不登校や支援の必要な生徒への対応が充実しているイメージのある高校は」の問いで、同校が54%を占め、抜きん出た。不登校支援に取り組む学校として認知されていることを示すと同時に、潜在的な問題に対する地域の関心の高さがうかがえる結果だ。
2001年に創設された美作高校通信制。その設置の際には校内から反発も起こった。当時、通信制はマイナスのイメージが強く、中退する子は「学校不適用児」のレッテルを貼る風潮があった。
20年以上にわたり、不登校の子の立ち直りを支え、「伴走者」に徹する姿勢を大切にした取り組みを進めてきた。「通信制に対する地域社会の見方、考え方は以前に比べて大きく変わってきた」。仲田教頭は今そう実感している。
アルバイトなどで働きながら、高卒資格の取得に向けて勉学に励む生徒たち。働くことへの意識が高く、社会経験がしっかりと身についている。離職率も低く、地域の企業からは「引き続き通信制の生徒がほしい」との声や求人が増えているという。仲田教頭は「自分の道は自分で開拓していく。生徒たちは通信制に来た時からその覚悟ができている」と話す。
多くの卒業生が地域に残り、社会人として活躍。中学3年まで不登校だったある生徒は、飲食店のアルバイトに始まり、リーダーに昇格し、今では中国地区の指導係として社員教育を任されるまでに。進学の道も開かれている。同じように中学時代に不登校だった生徒で、大学に進んで教員を目指している学生がいる。
若い世代が自分の居場所として学び、高卒資格を得て、自立して社会に出る―。生徒たちは地域を支える人材、労働力としてそれぞれの分野、方面で輝きを放っている。
「入学当初は夢もなく悩んでいたけど、友人や先生に支えられ、希望が持てるようになった」。ある女子生徒は卒業式でこう感謝の言葉を述べ、花束を手に笑顔で巣立った。
先日行われた本年度後期の卒業式では41人が高卒資格を取得。大学や専門学校への進学が8人、就職14人、陸上自衛隊2人など、それぞれの道を歩んでいく。
そうした中、美作高校は「不登校特例校」の設置に向けた検討を行っている。不登校の生徒に多様な教育機会を提供するため、実態に応じて教育課程を柔軟に編成できるのが特色。「夢や目標をあきらめることなく、全日制での卒業」を目指す。
同校は「これまで不登校の生徒に対応してきたスキル以上のものが求められるため、さらにブラッシュアップさせたい。地域の小中学校、さまざまな機関、人たちと取り組んできたスタイルを一層大切にしながら運営していきたい」としている。