かつて出雲街道の宿場町として栄えた岡山県勝田郡勝央町勝間田。 その一角に鎮座する勝間田神社は、 伊弉冉尊 (イザナミノミコト) を祭る由緒ある古社だ。境内には天満宮も祭られ、大勢の受験生や学生が学業成就を願って訪れる。神社役員の額田進さん(71)は「地名、町名、旧郡名、そして神社名まで『勝』が四つそろうこの地は、古くから縁起の良い土地として親しまれてきました」と話す。
その「勝の力」を全国に届けようと最初に「一球」を投じたのが、地元の野球専門店「スポーツショップムサシ」社長の治郎丸義浩さん(46)だった。
「縁起のいい勝央町の名前を全国の人に知ってほしい」。そんな思いから、2013年に「勝」マーク入りの野球ボール「勝球 (かちだま)」を発売した。勝球は、必勝祈願を受けてから販売され、口コミが広がり全国から注文が来るように。これまでに約5万球が売れた人気商品となった。「一生懸命頑張っている人たちに、勝央町から励ましを届けたい。やる気スイッチを入れるお手伝いがしたい」と治郎丸さんは語る。
こうした取り組みを追うように、勝間田神社も必勝祈願の「パワースポット」として知られるようになった。境内の絵馬掛けには「合格」「全国制覇」「必勝」といった言葉がずらり。同町出身のプロゴルファー東浩子選手をはじめ、岡山湯郷ベルの選手たちも必勝祈願に訪れている。全国高校サッカー選手権では、第101回大会(2022年度)で初優勝を果たした岡山学芸館高校に、勝間田神社で必勝祈願したボールが選手たちに手渡されていた。翌第102回(2023年度)大会では青森山田高校が頂点に立ち、後日、御礼奉納のボールが同神社に届けられ、「2年連続日本一に関わった神社」として話題を集めた。

同町では、こうした「勝を願う文化」を地域の力に変えるため、17年から行政・産業・金融機関が連携して地域ブランド「勝ブランド」を立ち上げた。認証の基準は厳しく、勝央町で生まれた物語性のある商品であること、「勝」「かつ」「Victory」などの言葉を含むこと、全国に向けてアピールできる独自性を備えることなどが求められる。
その代表格が同町河原で岡山甘栗の生産・加工を手掛けるイースト・マスター秀地の「勝ぐり」だ。スタッフの阿黒尋子さん(63)は、しょうおう志援協会の副会長で勝ブランド実行委員会の中心メンバー。「古くは戦国武将が出陣前に食べた縁起物。『勝ち並びのパワー』を込めています。念願成就にぜひ食べてもらいたい」と胸を張る。勝ぐりは、幸運を呼ぶとされる9粒入りで、紅白の紙に金水引を結んだ特別仕様。「一年の計は元旦にあり。自分に克(か)つためのパワーをもらいに、勝間田神社に参拝に来てください」。
勝ブランドにはこのほか、めでたいたい焼き「勝ち鯛(たい)」(あかり餡)、金塊を思わせる形が特徴の焼き菓子「勝栗フィナンシェ」(ブーランジェリーミーツ)、「勝」が3回繰り返すボリュームたっぷりの「勝三度(かつさんど)BOX」(味舗一蔵)、勝央町の開運手拭「勝手拭」(縫夢ing)、学生たちに人気の文房具シリーズ「ステーショウオウナリー」(しょうおう支援協会)など多彩な商品がそろう。どれも 「勝つ」の祈りを込めた品々ばかりだ。

勝ブランドは、同町勝間田のこころざしシェアスペースのほか、各店舗、オンラインショップで購入できる。
3日には、勝間田神社で午前10時から「勝ブランド祈願祭」、11時から「『勝王』決定ジャンケン大会」が開かれる。新しい1年の始まりに、願いを胸にこの地を訪れてみてほしい。
