コロナウィルスについて 美作保健所の川井睦子所長にインタビュー/岡山県

医療・福祉
         

 新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるっており、感染拡大に収束の兆しは見えない。岡山県美作地域ではまだ患者の発生の確認はないものの、いつ発生してもおかしくない状況だ。どのようなウイルスなのか正しく知り、正しく備えることから予防は始まる。美作保健所の川井睦子所長に、住民一人ひとりが心がけるべき対策などを一問一答形式できいた。

 ―コロナウイルスはどのようなウイルスですか?
 これまでに、人に感染する「コロナウイルス」は、7種類見つかっており、その中の一つが昨年12月以降に問題となっている「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」です。このうち4種類は一般の風邪の原因の10〜15%(流行期は35%)を占め、多くは軽症。残り2種類は2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や12年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」です。コロナウイルスはあらゆる動物に感染しますが、種類の違う他の動物に感染することはまれです。また、アルコール消毒(70%)などで感染力を失うと知られています。
 ―新型コロナウイルスは、どのように感染しますか?
 現時点では飛沫感染と接触感染の二つが考えられます。飛沫感染は、感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染します。感染を注意する場所としては、屋内などでお互いの距離が十分に確保できない状況で一定時間を過ごす時です。接触感染は、感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、周りの物に触れるとウイルスがつきます。未感染者がその部分に接触するとウイルスがつき、感染者に直接接触していなくても感染します。感染場所の例としては、電車やバスのつり皮、ドアノブ、エスカレーターの手すり、スイッチなどが挙げられます。
 ―感染を予防するため、何に気をつければよいですか?
 一般的な感染症対策や健康管理を心がけてください。具体的には石けんでの手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒などを行い、できる限り混雑した場所を避けてください。また、十分な睡眠をとることも重要です。そのほか、人込みの多い場所は避けてください。
 ―マスクは効果がありますか?
 マスクは咳やくしゃみによる飛沫やそれらに含まれるウイルスなどの病原体の飛散を防ぐうえで高い効果を持ちます。咳やくしゃみなどの症状がある人は積極的に着用しましょう。自分の予防用にマスクを着用することは、込みあった場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では一つの感染予防策ではありますが、屋外などで相当込み合っていない限り、マスク着用による予防効果はあまり認められていません。
 ―マスクが手に入りにくいですが、代わりの方法はありますか?
 自分の手を用いるのではなく、ハンカチやタオルなど、口をふさぐことができるもので代用しても飛沫を防ぐ効果があります。
 ―感染が疑われる場合、どうすればいいですか?
 発熱などのかぜ症状がある場合は仕事などを休み、外出やイベントなどへの参加は控えてください。咳などの症状がある場合は咳エチケットを行ってください。発熱などのかぜ症状は現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気による場合が圧倒的に多い状況です。かぜ、インフルエンザなどの心配がある時にはこれまで同様、かかりつけ医などに相談ください。新型コロナウイルスへの感染の心配に限り、「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせてください。特に次の条件に当てはまる人はセンターに相談してください▽かぜの症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならない時含む)▽強いだるさ(倦怠感)、息苦しさ(呼吸困難)がある場合、高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患)がある人や透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤を用いている人▽かぜの症状や37.5度以上の発熱が2日以上程度続き、強いだるさや息苦しさがある場合。
 ―潜伏期間はどのくらいですか?
 WHOの知見では現時点で1〜12.5日(多くは5〜6日)とされています。これまでのコロナウイルスの情報などから未感染者は14日間にわたり健康状態を観察することが推奨されています。
 ―治療方法はありますか?
 現時点の治療の基本は対症療法です。肺炎を認める症例などでは必要に応じて輸液や酸素投与などの全身管理を行います。細菌性肺炎の合併が考えられる場合は細菌学的検査を実施するとともに抗菌薬の投与が必要と思われます。肺炎例や重症例に対して副腎皮質ステロイドの投与については現時点では有効性を示すデータはなく、推奨されません。重症呼吸不全に陥った症例では体外式膜型人工肺の適応となる場合がありますが、これを用いた治療には経験が豊富な医師の判断が必要とされ、日本集中治療医学会などの関連学会は医療現場からの相談を24時間体制で受け付けています。新型コロナウイルスのワクチンは実用化されているものは存在しません。
 ―イベントの開催で注意することはありますか?
 多数の人が集まるスポーツや文化イベントなどは大規模な感染リスクがあり、中止、延期、規模縮小などの対応をお願いしました。引き続き国内の急速な感染拡大を回避するため、極めて重要な時期にあり、不特定多数の人が遠距離(目安として県外)から集まるイベントは検討していただきたい。
 ―岡山県内で感染者が確認されましたが、美作地域ではどのようなことに気をつければ良いでしょうか。
 今回、診断された感染者は、海外で感染した可能性が高く、岡山県が地域感染期(感染源が不明の患者がいる時期)に入ったのではなく、地域発生早期であることは変わりありません。今まで申し上げた手洗いなどの感染症対策を続けてください。
 ―美作地域で感染者が出た場合、住民の生活は変わりますか。
 岡山県は地域発生早期という時期にあたり、封じ込めといわれる動きをします。感染者からどこで何をしていたかといったいわゆる行動調査をし、感染源を突き止めたり、感染拡大の危険性を評価します。そして感染拡大の可能性がある場合、例えばその患者と同じ施設を使用していた人は注意してください、といった形で注意喚起します。
 感染源を突き止めることができず、感染拡大の可能性が高い場合は、イベント自粛や、学校生活の見直し、不要不急の外出は控えていただく、仕事に行く場合は自家用車を使っていただくといった対策をお願いします。また、いま県が取り組んでいますが、時差出勤という、空いている時間帯に出勤して空いている時間帯に帰るという、電車内などで人が密集する状態を避ける取り組みも有効です。
 また、特に注意していただきたいのは、美作地域は高齢化率が高く、高齢者にウイルスを届けない対策が重要になります。高齢者と接するときや介護施設に行く際は、たとえ症状がなくてもマスクの着用をお願いしたい。
 一から十まで何もかも自粛して家に閉じこもっていただくということにはなりません。市民生活をしっかりと回していくことが重要です。北海道のように感染者数が一気に増えてしまった場合は、外出の自粛も有効であるため、各自治体も発生状況に応じて緊急事態宣言をする可能性はあります。発表の前から家に閉じこもっていると市民生活に混乱をもたらすので、やるべきことをきちんとしながら備えるという意識も大切だと思います。
 ―新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しが見えませんが、どのような心構えで生活することが望ましいですか。
 繰り返しになりますが、手洗いとうがいの徹底。そして体の弱い人と会う際はマスクをしてください。厚生労働省の発表によると、いまインフルエンザの感染者数は例年より4割減っています。手洗いはノロウイルスもインフルエンザもコロナウイルスもありとあらゆる感染症を防ぎます。これが一番大切。
 そして体調を整える。しっかり食べて、しっかり休む。若い人は体力をしっかりつけて、例え感染しても軽症で終わる努力をする。糖尿病や高血圧など基礎疾患のある方はぜひ医療機関に行ってコントロールしていただきたい。高齢者や体力の落ちている方はウイルスに近づかないようにする。本当に流行したときに困らないようにしていただきたい。
 日本の医療体制はイタリアと比較すると潤沢で、ネットワークもしっかりしており、美作地域の方も安心していただきたい。住民側では、心配だからとむやみに検査をしないなど、適正に病院を使うように心がけていただきたい。
 年度末で仕事も大変だと思いますが、本当にやらないといけないことはやっておくべきだと思います。それが備えになると思います。よく言われることですが、正確な知識とともに、正しく恐れることが重要になります。


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