岡山県は、鳥取、兵庫との3県にまたがるツキノワグマの「東中国地域個体群」について、2023年当初の推定生息数が859頭(中央値)に上るとの調査結果を公表した。前年同期(808頭)比で6・3%増え、安定的な存続の水準(800頭)を引き続き超えていると判断。捕獲上限を引き上げ、人的被害防止に向けたゾーニング管理を進める方針。
調査は3県が合同で実施し、22年の捕獲数や出生率、死亡率などを基に算出。その結果、個体数は615〜1243頭の範囲とされ、実数に近い中央値を推定数とした。
東中国地域個体群は1991年、環境省のレッドリストで「絶滅の恐れがある個体群」に指定され、県は2000年から狩猟を全面禁止して保護。しかし生息密度が高まるにつれて生息域、行動域を広げて人里への出没が相次ぎ、17年から捕獲上限を設けた上で狩猟を解禁している。
環境省のガイドラインでは、推定生息数800頭以上で「安定存続地域個体群」とされ、15%までの捕獲を認めており、3県はこれに基づいて23年度の捕獲上限を128頭に設定。人里に繰り返し出没する個体を有害駆除するほか、錯誤捕獲した個体にICチップを付けるなどして行動範囲を掌握し、人的被害防止につなげる。
岡山県内の22年度の出没数は127件で21年(175件)に比べて約3割減少。捕獲は24頭(21年28頭)で、うち17頭が有害駆除、7頭が錯誤捕獲。狩猟は0頭だった。
県自然環境課では「3県で情報を共有し、本来の生息域に極力留めるゾーニング管理につなげたい。6月には繁殖期に入り、雄は行動範囲を広げるため、登山などで入山する際は鈴やラジオで人の存在を知らせるよう気をつけてほしい」としている。