津山市出身の兵庫県西宮市役所職員で、ピアニストとして活動する谷口博章さん(51)=神戸市=が、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町を支援するためのCD「南三陸に捧(ささ)げる音」を制作した。脳梗塞から復活し、被災地復興を願う希望を奏でており、町に売り上げを寄付する。12日から津山市内で先行販売している。
「音楽を通じて被災地への思いをつないでもらえたらうれしい」
谷口さんは2011年の震災発生直後の4月に西宮市からの派遣職員として同町に赴任。阪神・淡路大震災の経験者でもあり、災害後のマスコミ対応や災害広報の発行などに奔走した。派遣最終日には避難所2カ所でミニコンサートも開き、その後も音楽を通じて交流を深めてきた。18年に脳梗塞で倒れたが、わずか半年でのコンサート復帰という奇跡を起こしてくれた愛用のピアノを昨年3月に寄贈し、町内の保育所で使われている。
震災から10年が経過したが、新型コロナウイルスの影響で町へのチャリティーコンサートは開催しにくいため、持続可能な方法としてCDの制作を思いついた。1枚1500円(税込み)で、売り上げから経費を差し引いた額を寄付する。寄贈したピアノの保守・管理費用、同ピアノを使った文化事業の実施、文化施策充実に活用してもらう。
CDは今年2月に新魚町のベルフォーレ津山で開いたリサイタルを収録。リストやショパンといった南三陸町で演奏した曲や、ドビュッシー、リストらの計9曲で、「辛い気持ちに寄り添ってくれるような曲を選んだ」という。
谷口さんは「大切な人や物を失った心を癒やすには支援が必要で時間もかかるが、音楽は大きな力を発揮してくれる。今後もピアノを通じた支援活動を続け、コロナが終息したら再び現地での演奏を実現したい」と話している。
一般販売は8月1日から。津山市内では沼のヨシダミュージックと、ベルフォーレの事務所で取り扱っている。また、市立図書館にも寄贈する予定。
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1南三陸町を支援するCDを制作した谷口さん