ヤングケアラーの苦しみと輝き 介護職のお坊さんが漫画になった

行政・公共 ヤングケアラーだった酒井清旭さん(41)の体験が漫画に「お母さんのおむつを替えた日」
ヤングケアラーだった酒井清旭さん(41)の体験が漫画に「お母さんのおむつを替えた日」
         

 酒井清旭(41)=大阪府豊中市=さんは、介護の職に就いて10年、ケアマネージャーとして働いて6年になる。日々の業務の中で、社会の中で孤立しそうな人に出会い、そのたびに、少しでも生きがいを持ってもらいたいと念じながら業務にあたっている。

 介護の仕事の他に、19歳からお坊さんとしても活動しており、「人は人を救えるほど立派ではない、でも、手助けはできるのではないか」と、日々、様々な悩みを持つ人の心に寄り添いたいと考えている。

 ”ヤングケアラー”という言葉に出会ったのは3年前。衝撃が走った。「これは昔の私だ」

 子どもの頃、ひとり親の母が病床に伏し、一人で介護した。家の中には、いつも母と2人。当時は、気づかなかったが、今ならわかる。当時の自分には、ケアが必要な”ヤングケアラー”だったことに。

 それから、ヤングケアラーの支援をしたいという気持ちを周囲に伝え続けた。1年半前、ヤングケアラーの支援をしている「NPO法人ふうせんの会」に所属し、現在は、教育者や福祉関係者に広報する活動を主に行っている。

 「ヤングケアラーは自分自身では、ケアが必要なことには気づけないです。周りの人が見つけてあげないといけないんです。だから、本人よりも、見つける側、福祉関係や教育関係の方にもっと知ってもらいたいです」

 活動を続ける中で、酒井さんの思いに共感した作家の一ノ瀬かおるさん=岡山県=から、体験を漫画化したいという話があり、竹書房のささくれーるで、2022年6月から月刊で連載がスタートした。すべてが体験に基づいた実話。

 今回、コミックスとして出版となった。そこには、家事や家族の世話などを日常的に行う「ヤングケアラー」の現状が、描かれている。

 酒井さんは、「苦しいことをたくさん知っている人こそ、輝けると思います。今回、漫画で体験が文字や絵になったことで、自分自身を見つめることができ、より深く考えるきっかけになりました。作家さんとのインタビューを通じて、時間をかかってもいいんだと、心が楽になりました。感謝しています。」

 『お母さんのおむつを替えた日 ヤングケアラーの見つけ方』(一ノ瀬かおる、福田旭/竹書房)税込み1320円。 全国の書店、電子書籍で取扱い中。※漫画では、酒井清旭さんは福田旭とクレジット。

「お母さんのおむつを替えた日」のシーン
「お母さんのおむつを替えた日 ヤングケアラーの見つけ方」のシーン


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