岡山県苫田郡鏡野町富西谷の布施神社で5日、県重要無形民俗文化財「お田植祭」が開かれ、豊作を祈願するユーモラスな神事を多くの見物客が見守った。
田に見立てた境内を獅子練りで清めた後、牛に扮した子どもが元気に牛鍬を引く「荒起し」、鍬を使ってあぜを塗る「鍬代」、男衆が太鼓に合わせてサカキの葉をまく「田植」など、昔の農作業の様子が表現された。
最後に殿様が家来の福太郎を従えて登場。福太郎は山盛りの飯を食べてもらおうと差し出すが、殿様は食べようとしないで首を横に振るばかり。ようやく殿様が口を開けると、今度は福太郎がぱくりと食べ、のどに詰まらせて苦しみ、観衆を沸かせた。こっけいな所作を殿様が笑うとその年は不作になると言われるが、殿様は最後まで表情を変えず、豊作を“約束”して祭りを終えた。
熱心に写真撮影していた真庭市の60代男性は「数十年ぶりに訪れたが、とても楽しく狙い通りの写真が撮れた」。殿様役を務めた赤木督尚さん(37)は「緊張したが、堂々と振る舞うことを心がけ、無事に終えてほっとした。少子化の中だが、今後も祭りを存続させていきたい」と話していた。