【特集ザ・作州人】”岡山の奇跡”起こした男の流儀 株式会社サードシップ社長の白石智さん

ザ・作州人
         

 2023年最初の「ザ・作州人」では”岡山の奇跡”と呼ばれる男を紹介する。いま最も勢いのあるスポーツブランド「EGOZARU(エゴザル)」を手がける株式会社「サードシップ」代表取締役社長の白石智さん(34)がその人。津山高専中退後、回り道をしながらコンビニ経営を経て現在の地位を確立した。そこには破天荒と思える中に、先見性と行動力があった。

 栄枯盛衰の激しいアパレル業界で一気に力をつけているのがスポーツブランド「エゴザル」だ。2015年のブランド立ち上げから事業を拡大し、急成長。そのプロセスは”岡山の奇跡”とまで言われているほどだ。ところが、その先頭で突っ走ってきた白石さんはいたって謙虚に受け止める。

 「何がハマったのか分かんないです。僕はひたすら動いただけ。その過程でよい人たちに巡り会ったのが大きいんだと思います」

 人生は、世の中は捨てたもんじゃない。白石さんのドラマチックな人生をみると、素直にそう思える。数学が得意ということで津山高専に進んだが、3年で中退。大阪に出たものの、定職らしき定職に就くことなく、一時はドロップアウトしかかった。

 「高専ではロボットを作ったり、システムを構築したりするわけですが、あまり興味が湧いてこなかったんです。最終的には社会に出て会社員になるんだろうけど、自分には向いてないと思ってました」
 大阪から津山へ戻り、実家が院庄など2カ所でコンビニエンスストアを営んでおり、その一員に加わった。

 「4、5年は1日も休んでないぐらい。地域の優良店にはなっていましたが、一番苦しかった時代かも知れません」

 将来のことも考え、宅建を取得。2014年に会社を立ち上げ、不動産業に乗り出そうとした。しかし、設立後に仲間2人が参加せずに挫折し、会社は1年間休眠状態へ。ところが、ここから事業が急展開するのだから人生はおもしろい。絶望の中で自分の強み、好きなことは何かを考え、そこで思いついたのがアパレル参入だった。
 「どうせなら1人でやろうと。洋服が好きだったので服を、と思ったけど、戦えるとしたらニッチなスポーツだなと思い、その中で競技人口が一番多いバスケに狙いを定めました。元から海外で売ろうとも思っていたので」

 このスケールの大きさはどうだろう。しかも、その間にエゴザルのブランドやロゴも考案しECサイトも自分で作成。さらに、縫製工場に商品を大量発注し、退路を断っている。
 「初年度に1億売りますと取引先に豪語して、サンプルを持って東京で飛び込み営業。すると運良く、いい卸先に巡り会い、トライアルで1カ月だけ売らせてもらったところ、その店舗での月間の売り上げが1位になったんです」

 そこからはとんとん拍子。2016年10月にプロバスケットボールリーグの「Bリーグ」が誕生する時流にも乗り、知名度を上げていった。21―22シーズンでは、ユニフォームサプライヤーとして6チームと契約しており、これはアンダーアーマーに次いで2位。アディダスやアシックスを上回っている。

 「海外のプロチームとの契約も交渉中なのと、別で海外ブランドの国内ライセンス展開も23年から決まっている。今後は総合的なアパレルメーカーとして成長していければと思っています」

 まだ34歳とあって、志半ば。2022年5月には社名を「三祈」から「サードシップ」に変更し、新たな挑戦を続ける。それでも、ここまでのポジションを築けた秘訣を聞くと「無理やり自分のケツに火を付けたのが必死になれて良かったのでしょう。”ゼロイチ”が得意ですから。失敗や変化にビビらず挑戦し続ける事が大事では」と話してくれた。

 これぞ、岡山の奇跡。ここにも肝っ玉の据わった作州人がいた。
  (山本智行)
 ◇白石智(しらいし・さとる)1988年7月6日生まれの34歳。津山高専中退後に大阪で過ごす。その後、津山市で家業のコンビニを手伝いながら26歳で起業し、やがてアパレル業界へ。以来、7年連続増収増益を続け、今期の年商12億の見込み。


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