岡山県津山市の加茂地域のスーパーが16日、コロナ禍以降の光熱費の高騰などを理由に閉店した。移動手段のない高齢者を中心に「買い物をする場所が減り、不便になる」といった声が上がっている。
このスーパーは個人経営で、県道沿いの利用しやすい場所に立地。ごんごバス加茂線の乗り場にもなっていた。経営者によると、70年ほどの歴史があるといい、生鮮食料品や日用品などを扱ってきた。近年の電気代のほか、物価高と物流費の高騰が廃業の主な理由という。「心が揺れた」とこぼす。11日から店内全品のセールを行い、閉店を惜しむように多くの客が訪れた。
遠方に買い物に出かけにくい地域の高齢者からは困惑の声。歩いて通っていた加茂町の厨子照葉さん(93)は「週1回ほど行っていたが、買い物をする場所が減るのは困るし、不便。岡山にいる子どもが帰って来る時に買い物を頼んでいるが…」と話す。
加茂町の尾島弘子さん(87)も「息子に連れて行ってもらい、卵やお肉を買っていた。ヘルパーさんがおかずを作るための材料が必要。地元から店が無くなるのはやっぱり寂しい」。市内の大型店などには行かず、移動スーパーの利用を週1回から2回に増やしたいという。
スーパーの閉店をめぐっては、鳥取県内のJA系の店舗の相次ぐ閉店など全国的な問題として顕在化。買い物弱者への支援、対策が求められている。身近なスーパーは住民の生活を支え、コミュニケーションの場にもなってきた。人口減少の中、加茂地域にはほかに、食料品などを扱う個人商店やコンビニエンスストアがあるが、高齢者をはじめとする住民から〝買い物難民化〟を危惧する声が上がっている。