津山市の郷土史研究団体・作陽会が編さんした、武具制作に携わった津山藩の技術者たちの史料集『史料からみた 津山藩の武具づくりと刀剣』をもとにした論文が、国内最高峰の日本美術刀剣保存協会刀剣美術論文賞を受賞した。同書の史料収集と監修を務めた玉置清二さん(85)=大谷=は「世界中の刀剣ファンが目にする論文であり、とても喜んでいる」と話している。
論文は「細川正義の研究 作州津山藩『江戸日記』と鹿沼『細川家文書』に見る刀鍛冶の生涯」。作者は小島つとむさん(東京都)。小島さんは刀工細川家について調査を始めた際に『史料からみた 津山藩の武具づくりと刀剣』を読んでがく然としたという。「重要な記事をいくつも発見した。不明な点、調べたいことが続々と出てきた」といい、取材を重ねて論文を執筆した。
『史料からみた 津山藩の武具づくりと刀剣』は2014年、美作国建国1300年を記念して弊社から出版。玉置さんが家にあった脇差(作州刀)の出所を調べるために1992年から始めた研究の集大成だ。津山松平藩資料(愛山文庫)の数百の史料から抜粋して翻刻。「海岸で光る一粒の砂を拾い出すような作業だった」と振り返る。
「初めて論文で引用され、初めて認められた。論文を書いた小島さんには、あなたは津山のために素晴らしい仕事をしてくれましたとお礼を伝えました」と玉置さん。
「論文が出た後、細川家三代、明珍家三代に関する問い合わせが多数寄せられた。今後、研究の方向性も変化してくるかもしれない。収録しなければならない史料がまだある。修正作業も続けている。200年経っても津山の史実を伝える本にしたい」といい、調査・研究を続けている。
史料からみた 津山藩の武具づくりと刀剣 日本美術刀剣保存協会刀剣美術論文賞を受賞