岡山県津山市で10日、男女共同参画運動の礎を築いた教育者・矢島楫子の生涯を映画化した「われ弱ければ 矢嶋楫子伝」の全国185カ所目となる津山上映会が開かれる。メガホンをとったのは、91歳の日本で現役最高齢の女性監督・山田火砂子さん。同時上映の、津山市ゆかりの女優・若村麻由美さん主演の「一粒の麦」は国が認定する初の女性医師となった荻野吟子の生涯を描いている。福祉や反戦、女性問題など骨太の社会派作品を世に問い続けてきた山田監督。舞台あいさつのため初の来津を予定している。作品へ込めた思いを聞いた。
―近代日本を切り開いてきた女性先駆者に焦点を当てた作品を立て続けに制作されています。
矢嶋楫子さんの話をしに津山に行くのが楽しみ。矢嶋さんは坂本龍馬より少し年上で、37、8で離婚して、40で学校の先生になって、いろんな大事業を次々としていった。この映画の前に荻野吟子さんの映画をつくった。女医という仕事を樹立した人。彼女も矢嶋さんを大変尊敬していた。この映画を見て「私も、勉強しようと思った」とか、そんなメッセージをたくさんいただいてうれしい。
―どんなことを観客に伝えたいですか。
私には知的障害がある子どもがいる。当時、障害がある人をとりまく環境は本当にひどかった。わたしもさんざん泣いて、泣いて、泣き暮らした。自殺者もたくさんいた。そんなことを訴えたくて映画の世界に入ったのが40歳のとき。70になって監督を始めた。勉強を始めるのに年齢は関係ない。女性に強くなってほしい。国会議員の3分の1を女性で占めるようになれば、戦争をしない国になると思う。
―「一粒の麦」で主演された若村麻由美さんのお母さんが津山市出身で、地元としても若村さんの活躍をうれしく思っています。
監督として、若村さんとの仕事は楽。テスト1回、本番1回、文句のいいようがない素晴らしい女優さん。荻野吟子さんを18歳から演じてもらったけど、本当に18歳に見える。
―読者の皆さんにメッセージを。
日本の女性は運に命を差し出して生きている人が多い。私って、運が悪いのよ、という人がたくさんいる。運に命をあげないで。命は自分で使って、使命感で生きてください。命は自分で使うもの。そんな女性が増えてほしい。
上映会は10日、岡山県津山市のベルフォーレ津山で開かれる。「一粒の麦」は午前10時半〜、「われ弱ければ」は午後2時半〜、各上映前(開演後)に山田監督の舞台あいさつを予定。前売りは一般1200円、当日1500円(1作品)。ベルフォーレ津山(TEL:0868-31-2525)。
プロフィル
映画監督・プロデューサー。
山田火砂子
東京生まれ。戦後女性バンド「ウエスタン・ローズ」で活躍後、舞台女優を経て映画プロデューサーに。実写版「はだしのゲン」「裸の大将放浪記 山下清物語」など多数製作。初の監督作品は、重度の知的障害者である長女とともに歩んだ半生を題材にしたアニメ映画「エンジェルがとんだ日」。「石井のおとうさんありがとう 岡山孤児院・石井十次の生涯」は日本児童福祉文化賞受賞。「大地の詩〜留岡幸介物語」など。