岡山県津山市の縫製会社「内田縫製」は、1969年の創業以来従業員や応援者として会社の経営や事業を支えてきた地元住民に感謝し、プレゼントを企画。クラウドファンディングの支援金で開発した「双糸デニム」で衣服などを作り、5月ごろに対象の約160世帯に1着ずつ贈る。
企画は内田政行社長の次男・泰造さん(30)が発案。昨年の5~8月にクラウドファンディングで応援を募ったところ、約3257万円が寄せられた。開発は長男の直行さん(32)が担当し、着心地が良くてデニムならではの経年劣化や色落ちが楽しめる逸品を製造した。
双糸(そうし)とは2本の綿糸をより合わせて1本を作っており、強度が高いのが特徴。縦と横に織り合わせることで薄くても丈夫な生地ができる。さらにオレンジと黄色の下染めを施した糸を使うことでインディゴ(藍色)の染色があせた時、使い込まれたような“ヴィンテージ感”を醸し出す深みと渋味のある色合いになる工夫も。旧式の力織機で時間をかけて織るなどして希少価値が高いと言われる「セルヴィッチデニム」に仕上げている点も愛好家たちを引き付ける。
贈呈に先立ち、寸法を測るといった準備を行うために8、9日は同所の新野山形公会堂で「大試着会」を実施。ストレートやスリムテーパードのジーンズのほかにジャケットやエプロンなどの見本を用意しており、来場した地域住民は早速気に入った1着を着て、「かっこいいなあ」「とても着やすい」と喜んでいた。
内田権士さん(85)は「生地が柔らかく動きやすくて気に入った。地元企業が頑張っていることも、こうして贈り物をいただけることもとてもうれしい。これからも応援していきたい」と話していた。
泰造さんは「祖父の代から地元に根差した企業としてやってきた。やっと恩返しができる機会に恵まれてうれしく思う。これからもみなさんに貢献できるように励んでいく」と語っていた。
完成品は今後、商品化も検討しているという。
