岡山県津山市田町の津山土岐家財団記念館で21日、土岐家財団の第21回講演会が開かれ、歴史学者で蒜山郷土博物館長の前原茂雄さんが「城下町津山成立以前の歴史的景観〜美作国田中郷の復元〜」をテーマに話した。
前原さんは「城下町ができる前の中世の津山の姿は具体的には分かりにくい」と前置き。江戸時代にまとめられた史料「武家聞伝記」「森家先代実録」を再検討しながら、城下町が形成された“田中郷”の景観について分析した。
両資料について「森家の関係者がかなりの年月が経ってから執筆している上、森忠政(津山藩初代藩主)への偶像化を図った創作も見られる。入部前後を語る資料としては慎重に扱わなくてはならない」と指摘。田中郷一帯の地名や地形から「国家が直接支配していた領地であり、小田中付近にあたる場所とされていたが、実際は宮川の西部域で、小田中は田中郷のうち、新たに開発が進展した区域では」と推察した。
さらに空中写真や史料を元に、河川や道路の形状、成り立ちを解説し、「集落の地名や屋号、飲料水の確保、石造物の分布といったさまざまな観点から入念に調査し、初めて田中郷の実像が見えてくる」と結んだ。
歴史愛好家ら約30人が聴いた。