ビル管理や新エネルギー事業のガット(本社・岡山県津山市、松本啓一社長)のPPA事業会社・合同会社GRE備北が新見市と同市の公共施設に整備を進めていた、初期費用ゼロで再生可能エネルギー電力を導入できるPPAモデルの太陽光発電システムが完成した。公共施設に蓄電池を組み合わせたPPA事業を導入してCO2削減と地域レジリエンスを実現する「新見モデル」の2期目は、浄化センターなどの24時間電力を消費するライフライン2施設に配備した。
環境省の地域脱炭素移行・再エネ推進交付金の重点対策加速化事業に採択。新見浄化センターと馬塚浄水場にそれぞれ太陽光発電容量約370kWと約430kWのパネルを設置、そこに358kWh(定格容量)の蓄電池を導入した。年間約73万kWh(一般家庭202世帯分)を自家消費し、年間電気料金約217万円(2023年の税込電気料金と比較)の削減につなげる。年間の二酸化炭素吸収量をスギの木に換算すると22.4万本相当にあたるという。
同浄化センターには太陽光発電の電力を活用した国内最速の電気自動車用急速充電器を県内で初めて設置し、EV普及のためのサービス拠点としての機能を付加した。同浄水場では隣接地に太陽光パネルを設置し自営線でつなぐミニオフサイトPPAを採用、地元産石灰石を敷設し、両面発電パネルを設置することで発電効率向上にも挑戦している。
報告会が25日に同市正田の同浄化センターであり、急速充電器前でテープカットとEV充電のデモを行った。戎斉市長は「昨年、給食センターに設置した太陽光発電システムは順調に稼働している。今回二つの設備が完成して災害時の電源確保もできた。公共施設で行うことで、再生可能エネルギーのさまざまな相乗効果が期待できる」とあいさつ。同社の田中正彦会長は「新見市と弊社、そして環境省が協力してこのような仕組みを展開できたことは大きな財産であり、誇りに思う」と述べた。
ガットは、ゼロカーボンシティを目指している新見市と包括連携協定を締結。第3期目は「医療機関」や「介護施設」などのヘルスケア分野へPPAの太陽光発電システム導入を検討している。同社は新見市との取り組みを、防災や暮らしの質の向上といった地域課題解決と脱炭素を同時に実現するモデルケースとして、他の自治体での採用を目指したい考え。
プロジェクト責任者の廣瀬吉嗣取締役は「新見市様とは令和4年度からゼロカーボン実現に向けた連携協定を締結し、エネルギーの地産地消を目指してきた。2期目となる今回の事業は蓄電池の有効活用をテーマに、岡山県に蓄電池工場を持つパワーエックス社の協力を得て、太陽光発電の余剰電力を蓄電池にため夜間に供給するほか、EV急速充電サービスにも活用する全国初の試みにもチャレンジした。ライフラインなどの24時間電力を消費する施設では、蓄電池の導入効果は極めて大きい。中小規模の上下水道施設は全国どこの自治体にもあるため、今回の事業をPPAライフラインモデルとして多くの自治体へ展開したい」と話している。