地元の野菜を応援したい―。岡山県津山市で子育て中の主婦3人組が、農家と利用者を直接つなげる「つやまフレッシュデリバリー」をスタート。旬の野菜を同市内の定期循環便で会員の保育園や高齢者施設、飲食店などの事業者に直接届ける。「適切な食材を適切な価格で売買できるウィンウィンの仕組み」と好評だ。
事業を行っている「つやまのみかた」の3人は、光岡智紗子さん(38)と、前田蘭夢さん(39)、石川茜さん(41)。「子どもたちに安全安心な野菜を食べさせたい」と意気投合してチームを組んだ。
旗を振っているのは、地域活性化支援の一般社団法人MIKATAプロフェッショナルズ(横浜市)の小坂幸彦代表理事。小坂さんはつやま産業支援センターの初代統括マネージャーで、岡山県北部でもさまざまなプロジェクトに携わっている。
一昨年10月から農家のヒアリングを開始。津山地域の食は300億円の巨大な市場だが、大半は地域外からの食材でまかなっていることを指摘。そのうえで「安心安全でおいしい地域の食へのニーズは年々高まっており、地域にもそのニーズに応える優れた環境がある」として、昨年10月からサービスをスタートした。
現在は津山市、同県鏡野町の15ほどの農家と契約。利用者に「地元野菜の注文書」に記入してもらい、週2回届ける。12月はコマツナやホウレンソウ、ブロッコリーなど季節の野菜16種類をスタッフのコメントとともにリストアップ。注文を受けてから集荷、配達するため在庫はほとんど抱えない。農家と相談しながら年中無駄なく供給できる作付けの仕組み作りにも取り組んでいる。
光岡さんは「多くの農家さんがこだわりを持ち、愛情込めて野菜をつくっている。だけどすごくきれいなのに規格外だからといって出荷できない。そうした野菜を循環させることで農家さんの所得アップに少しでも貢献できれば」と話す。
「やっていくなかで、両者の困りごとが見えてきた」と話すのは石川さん。「例えば梱包が苦手な農家さんがたくさんある。私たちが配ればそんな手間はいらない。直売所に持って行けないお年寄りもたくさんいる。私たちはそうした課題を解決できる可能性がある」と語る。
前田さんは、直売所の10年来のスタッフ。「私も子どもたちも地元のおいしい野菜に育ててもらった。おじいちゃん、おばあちゃんたちが頑張っている。人も農地も地域の宝を生かしたい」と力を込める。
「津山のお野菜を保育園に届けようプロジェクト」には大きな手ごたえを感じている。「給食をつくる人たちはすごく子どもたちのことを考えていて、私たちが届ける野菜を喜んでくれる。生産者さんにお礼を伝えるよう頼まれることもある」。また、規格外の大きなサツマイモは皮がむきやすいと喜ばれるなど新たな需要の発見も多々あるという。
子育て中のお母さんたちの働きの場づくりにも意欲的だ。「多くのお母さんたちが仕事で悩んでいる。子育てと仕事の両立ができる環境づくりをしていきたい」
今後は扱う品種をより安定させて、個人の利用も視野に入れていきたい考え。「おいしいものを食べると笑顔になる。地元の野菜を食べて、元気になろう」と笑顔を見せた。
つやまのみかたは、野菜購入を希望する事業者、出荷を希望する農家、仲間になりたい人たちを募っている。
問い合わせは、光岡さん(TEL:070-9155-1717)。