舞台、映像、オンライン企画など、多様な表現に挑み続ける小郷拓真(こごう・たくま)さん(31)は、岡山県津山市出身。現在は東京を拠点に、俳優・脚本家・演出家として活動するほか、エンターテインメントに対して挑戦し続けることをコンセプトに作品を制作する団体「SFIDA ENTERTAINMENT(スフィーダ・エンターテインメント)」の代表も務めている。団体名「SFIDA」は、イタリア語で“挑戦”を意味する。
津山市で育ち、作陽高校ではサッカー部に所属。高校卒業後は1年間、専門学校に通い調理師免許を取得した。料理が好きだったこともあるが、「当時は父の経営する会社で働く道を歩まず、将来を考える時間にしたかった」と振り返る。
俳優という道を意識する大きなきっかけとなったのが、生田斗真さん主演のドラマ『遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~』だった。「あの作品に感動して、“俳優となって人に影響を与えたい”という気持ちが芽生えました」と話す。
卒業後に就職もしたが3か月で退職。夢のため、大阪に拠点を移したが当時アルバイトでお世話になっていたテレビカメラマンのスタッフから、「俳優を目指すなら、東京に行ったほうがいいよ」とのアドバイスもあり、わずかなお金を持って上京。その後、居酒屋でアルバイトをはじめて3日目にして、思いがけない転機が訪れた。
お笑い芸人・ワッキーさんが舞台の打ち上げで来店。職場で着ていた制服に“笑顔”と自分のモットーを書いたシールを貼っていたところ、声をかけられさらに作陽高校サッカー部出身であることを伝えると会話が弾み、舞台出演の機会を得た。初舞台では手応えを感じられなかったが、2度目の出演オファーもあり、舞台の面白さに目覚めた。
22歳でプロデュース業を始め、24歳で舞台事業を本格的に展開。2019年には団体「SFIDA ENTERTAINMENT」を設立し、「エンタメに挑戦し続ける」ことを理念に、等身大の人物や社会的テーマを扱った作品を発表し続け、プロデュース・演出作品は30作を超える。
コロナ禍では「ここで生きられなければ、エンタメで生きていけない」と覚悟を決め、ウェブを活用したイベントも積極的に取り組んだ。「もっと上を目指して挑戦していきたい」という言葉には、表現者としての信念と強い上昇志向がにじむ。 「今思えば、津山で育ち、家族や実家の存在は本当にありがたいものでした」と語る小郷さん。挑戦の舞台は東京に広がっていても、その心には、家族や地元・津山への深い感謝の気持ちがある。


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