壁面アートとジュリアナ東京、津山の月に、ナルトの里―。美作国のにぎわい創出に向け夢と希望を詰め込んだ〝アート〟が新たに生まれた。手掛けたのは、観光客300万人の誘客を目指す「美作国アートゾーン構想」を掲げる、津山街デザイン創造研究所。
「作州には世界に誇る魅力が詰まっていることをしっかり発信していきたい」と山本昇所長(65)=京都市=は話す。
国内外で活躍するローラーペイントアーティスト・さとうたけしさん(46)=東京都=の作品が岡山県・作州地域に初上陸。那岐山麓に抱かれた高級1棟貸し宿泊施設の壁面に、約40メートルにわたり心躍る四季の花々がポップに咲いた。津山城東の美都津山庵別邸内のヒノキテラスには「幻の津山城」が出現し、黄金の月が浮かんだ。
さとうさんの巨大壁面アートの舞台になったのは、奈義町行方に4月竣工予定のヴィラ美都奈義。ジュリアナ東京を手がけたことで知られる建築家の笹森則次さん(69)=東京都=が設計した。「ナルトの里」がモチーフで、空に向って伸びる穂先のようなルーフが特徴。面を効果的に組み合わせ、高さ5メートル、横幅40メートルの巨大なキャンバスをつくった。笹森さんは「単なる宿泊施設ではなく、ギャラリーなどマルチに活用できる。奈義の豊かさを映し出す鏡のようなパブリックスペースになってもらいたい」と話す。
さとうさんは1月29日から2日にかけ作業。今作品のために初めて46センチの大きなローラーを使用した。タイトルは「フォーシーズンズ in 奈義」で、ガーベラ、ブルーローズ、サクラなどの草花の生命の息吹を色とりどりにローラーの力強いストロークで表現。
「素敵な壁をつくっていただき、最高に楽しかった。奈義町を世界にPRしたい。那岐山麓の春夏秋冬にどうマッチしていくのか楽しみ」とさとうさん。2日にあった壁画お披露目式には奥正親町長も駆けつけ「那岐山、奈義町現代美術館に加え、また一つ町の自慢ができた」とあいさつした。
津山城東でのさとうさんによるライブパフォーマンスは1日、津山市西新町の美都津山庵別邸内のヒノキテラスで開かれた。「幻の津山城と津山の月」がテーマ。約30人の地元住民らが見守る中、1.5メートル×4メートルのヒノキキャンバスに、墨の濃淡だけで表現された幽玄な城の姿が浮かび上がった。金粉の月を浮かべ、最後に飛翔する鶴を描き入れた。
「若い人が世界に飛び立っていくイメージ。津山は素晴らしい歴史を有しているまち。素敵な縁に感謝しています」
今回の奈義、津山での作品の全貌はさとうさんが動画配信する予定。
山本所長は「全国トップクラスの出生率を誇る奇跡のまち奈義町は私の祖先伝来の地。ヴィラ美都奈義は、世界的なアートや歴史を身近に体感できる情操教育の場としての機能も果たしたい」と話していた。