新型コロナウイルスの全国的な感染増加に伴う緊急事態宣言の拡大で、岡山県は飲食店に休業を要請しないとしているが、広がる外出自粛の動きが、不特定の人が利用する飲食店などの経営に大打撃を与えている。先行きが見通せない状況に不安を募らせつつ、生き残っていくすべを探す。
「開けても地獄、閉めても地獄だろう。5月には廃業する店がでるかもしれない」。津山飲食業組合の今村正照理事長(77)は途方に暮れた。
50店舗が加盟しているが、どこも3月以降は予約が壊滅状態だ。収入が激減する中で従業員を雇い、店が入るビルのテナント使用料などを支払い続けることはできない。
政府による中小企業の資金繰り支援策として、日本政策金融公庫が取り組む実質無利子の融資制度はあるものの、「特に飲食業は収束後にどうなるか読めない。返せる自信が持てないのに前のめりにはなれない」と、慎重論が目立つ。
今村理事長が経営する岡山県津山市山下のラウンジ・ダンヒルは、3月の売り上げが例年の8割減ほどに落ち込んだ。創業40年以上で、多くの常連客にも支えられるが、飲み会に参加するのを勤め先から止められる人も多く、4月以降は連日、40ほどある座席は空いている。
所有するビルで経営し、夫婦で切り盛りしているのがわずかな救いという。「収束がいつになるか分からないが、我慢するしかない」とため息をつく。
同組合では、宿泊業12社でつくる津山旅館組合と連名で、17日、市税の減免と両業界への現金支給、地域商品券の発給を求める要望書を、谷口圭三市長に提出している。
一方、客足が遠のくのと同時にそのあおりを受けるのは、タクシーを運行している会社だ。10台を保有する勝田交通(事務所・津山市上河原)は、3月からの収益が例年の7割減。ほぼ、決まった日時に送迎する人やスーパーに買い物に行く高齢者の利用のみとなった。
11人いた運転手は減収を受けて3人が退職。他の8人については、休業補償制度の雇用調整助成金を申請して休んでもらい、下山社長と息子がハンドルを握る。
中山間地の過疎化に伴い、公共交通としてのタクシー需要が見出される中で、なんとか従業員は確保しなければならない。学校から離れた地区の子どもを送る通学タクシーを走らせているほか、市の小型乗合交通事業も担う予定だ。「今は、家族と雇っている社員が生活できるようにすることで精いっぱいだが、会社を続けるには行政の助けもほしい」。
観光バスは6月まで全予約がキャンセルになった。政府が事態収束後の観光需要喚起を狙いに掲げた、1泊最大2万円の旅行代金支援策が、景気回復へのかすかな望みにはなっている。
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外出自粛の動きの中で客を確保できなくなったラウンジ・ダンヒルの店内
新型コロナの影響甚大 飲食店の経営に大打撃/岡山・津山市
- 2020年4月21日
- 経済・産業