新型コロナウイルス関連で医師会長にインタ

医療・福祉 新型コロナウイルス関連で医師会長にインタ
         

 先週から美作地域で新型コロナウイルス感染の確認が相次いでいる。津山市では29日までに29人目の感染者が確認され、津山中央病院(川崎)ではクラスター(感染者集団が)が発生した。津山市医師会長で津山慈風会理事、宮本亨津山中央クリニック院長(67)に県北の医療体制や対応策などについて話をきいた。

 ―津山中央病院でクラスターが発生しました
 最初に職員、患者の陽性が確認されたのが19日。そこから一気に広がった。ただしこれは特定の病棟に限られ、この病棟の新規入院患者の受け入れは停止した。さらに感染の可能性が考えられる職員、入院患者は全員PCR検査をしており、29日までに438人の陰性が確認できた。陽性患者が出たのはこの特定の病棟のみ。その意味では封じ込めの形ができており、その効果がでている。
 コロナに感染した患者はこの病棟に限られるため、その他の診療業務は縮小せずに継続している。11月の初めごろに新規の陽性患者が出なくなって、クラスターの終わりを宣言できるはず。
 ―医療崩壊の心配があります
 今回、津山中央病院の感染症の病床は入院患者の感染者でほぼ埋まった。他の患者の受け入れは非常に苦しい状況だ。県北では保健所が50床ほど確保しているが、人的問題などがありすぐには機能しない。足りないときは県南で受け入れてもらっている。県はコロナ対策の病床をピーク時250床確保している。何を持って医療崩壊とするかだが、県全体で考えると決してオーバーフローしていない。
 ―医療現場の負担はかなり大きくなっていると思います
 感染者と接する際は防護服とゴーグルやフェイスシールドを着用する。出入りのたびに脱着が必要でかなり大変だが、みなさん当たり前だと思ってやってくれている。頭が下がる思い。
 ―なぜいま感染者が急増したのでしょうか
 市中感染は、保健所などから話を聞くと、やはり同時多発的に増えている。10月に入ってGo To トラベルキャンペーンなどで世間の雰囲気ががらりと変わった。感染者は岡山、倉敷市内ではなく、総社や新見など県内のローカルエリアで増えている。感染者は比較的若い人が多いのも特徴だ。要するに感染しているが症状が出ていない、そうした人たちが(自分が感染したことに)気がつかずに市中を歩いている。
 ―津山市は27日に新型コロナウイルス感染・クラスター対策強化宣言を発令しました
 要所要所での注意喚起は非常に重要だ。市中感染を出来るだけ防がないと、特に津山といったそんなに大きくないコミュニティーでポツポツ出てくると、取り留めもなく広がる可能性がある。市長や知事に力強いメッセージを発信していただきたい。
 ―いま危惧していることは
 比較的若く、ほとんど症状が出ない感染者が増えている。普通のちょっとした風邪のような、熱の出ない人も多く、したがって感染が分かるのも遅い。逆説的ではあるが、若い人にとってはそんなに怖い病気ではない。しかし、だからといって何をしてもいいわけではない。そうした人から高齢者や基礎疾患がある人たちにうつると、取り返しのつかないことになる。
 高齢者の介護施設にコロナが入らないことは非常に重要だが、そうした施設は感染症対策の訓練を受けておらず、かなりパニックになっている。注意が必要だ。
 ―一般市民が気をつけることは
 市中感染が広がっている。会話をするときはマスクをして、自分を守り、他人を守っていただきたい。手洗いをして、手指消毒をして、三密を避ける。こうした基本が社会を守るという意味でもとても大切になる。
 こうしたエチケットを伴う行動を取れば、変に自粛して何もしないという必要はない。もうすぐ忘年会の時期。よく夜の宴会が感染リスクがあるとされるが、
マスクをしていない状況での飛沫が問題で、その意味では昼の会食も同じ。大勢でさわいでごはんを食べると感染の可能性は高まる。
 店を休業する必要はない。飛沫対策などをしっかりやれば営業は可能だ。大集団でなくて数人で、十分なソーシャルディスタンスを取って食事を楽しんでいただきたい。コロナに勝ったがうつ病になったではいけない。いつまでも続くことではないので、新しい生活様式をしっかり実践していただきたい。
 ―季節性インフルエンザと同時流行が危惧されています
 県と県医師会共同で、11月1日から発熱外来を各医療機関で開く。今までは相談窓口が保健所の「帰国者・接触者相談センター」に限られていたが、インフルエンザが流行ってくると間に合わない。県内約300の医療機関が行うので、こちらで相談していただきたい。
 ―市民へのお願いはありますか
 一つはぜひ、自分の体調を管理してくれるかかりつけ医を持ってほしい。コロナの感染症を疑う際は津山中央病院に行くという話になってくると思うが、患者が増えすぎて感染症外来がパンクしたらどうにもならない。まずはかかりつけの医師に相談してほしい。そうすれば保健所も発病者への対応だけになってくるので多少フットワークが軽くなる。
 もう一つは、PCR検査。津山中央病院には県医師会からの寄付で8月下旬にPCRの機器を導入した。従来の検査法と合わせかなりの検査が可能で、疑わしい人にはリアルタイムで検査が出来ている。早ければ半日、かかっても1日で結果が出る。「陰性証明書」の取得を従業員に求める企業があるが、これに応じると無意味な検査が多く出てくる。本当に必要かどうか冷静に考えてほしい。この日検査して陰性でも3日後は分からない。せいぜい1日、2日の保障しかできない。安心のため、保障のためにやれというのは本末転倒で、あまり意味はない。
 最後に重ねていうことになるが、会話をするときはマスクをして、自分を守り、他人を守っていただきたい。
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取材に応じる宮本亨津山市医師会長


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