津山基督教図書館(現森本慶三記念館)は、1月3日に創立100周年を迎える。これを記念し、同館2階の歴史民俗館を3日から31日までの期間、入館無料で公開する。歴史を重ねてきた建物と展示物を、より多くの市民に身近に感じてもらう機会とする。
津山基督教図書館は1926(大正15)年、津山の商家「錦屋」に生まれた森本慶三が私財を投じて建設した、日本で唯一の基督教の文書伝道を目的とした私設公共図書館。東京大学在学中に宗教家・内村鑑三の感化を受け、学びを社会に開く場を津山につくろうとした。公共図書館のなかった当時、学生や社会人が集い、閲覧室で勉学に励む姿が見られたという。
建物は木造3階建てで、大正末期の洋風建築の流れをくみ、正面の列柱や時計塔が特徴的。設計・施工は、内村鑑三の紹介で招かれた青森県弘前市出身のクリスチャン棟梁・桜庭駒五郎が担った。24(大正13)年に着工し、完成時の開館式には内村鑑三も出席。1998年には国の登録有形文化財に登録され、近代津山を象徴する建築として評価されている。
現在の歴史民俗館では、津山藩や森本家、森本慶三の歩みに関する資料を常設展示。松平家からの拝領品をはじめ、森本家に伝わる資料など約1000点が並ぶ。二代将軍徳川秀忠の三女・勝姫が嫁入りの際に持参したと伝わる文箱や、岡山池田藩から津山藩にわたってきた「大名時計」などの拝領品は見どころの一つ。錦屋ののれんやはかりなど、商品や道具、調度品なども展示され、往時の商人文化や暮らしぶりを今に伝えている。
森本信一館長(85)は「祖父がつくった建物が当時の姿を保って残っていることに、改めて思いが深まりました。100年を節目に、未来へどうつないでいくかを考えたい」と語る。耐震化や活用を巡る調査も進む中、「展示だけでなく、建物そのものもゆっくり見てほしい。城の下にある施設なので、気軽に立ち寄ってもらえたら」と来館を呼びかけている。
